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【実家の空き家対策】手遅れになる前に!親が元気なうちに取り組むべき具体的な準備と話し合い方

お盆や年末年始に実家に帰省した際、ふと「家が少し古くなってきたな」「庭の草むしりが追いついていないな」と感じることはないでしょうか。親も少しずつ年を重ね、以前は当たり前にできていた家の手入れが負担になっているのかもしれません。

そんな時、頭をよぎるのが「将来、この家はどうなるのだろう」という疑問です。

実家のこれからのことについて考える際、多くの方が「親が施設に入って家が空き家になったら考えよう」「親が亡くなってから片付ければいい」と、問題を先送りにしてしまいがちです。

しかし、不動産業界で長年、多くのお客様の実家や住まいに関するご相談に向き合ってきた中で、確信していることがあります。

それは、「実家の空き家対策は、実際に空き家になってからでは遅く、空き家になる前に対策をしておくことが何よりも大切(秘訣)である」ということです。

いざ空き家になってから動き出すと、想像以上に多くの時間、費用、そして精神的な負担がかかります。最悪の場合、家を手放すことも活用することもできず、ただ税金と維持費だけを払い続ける「負動産」になってしまうこともあります。

この記事では、なぜ空き家になる前に行動しなければならないのか、そして、親が元気な今のうちにどのような準備をしておくべきなのかを、専門用語を使わず、日常のわかりやすい言葉で丁寧にお伝えしていきます。

第1章:なぜ「空き家になってから」では手遅れになるのか?

実家が空き家になる主なきっかけは、親の入院や、介護施設への入所です。「一時的なものかもしれないから、そのままにしておこう」と家を残したまま月日が流れ、気づけば数年が経過しているというケースは決して珍しくありません。

では、なぜそのままにしておくと困ったことになるのでしょうか。そこには大きく分けて3つの高いハードルが待ち受けているからです。

1. 建物の劣化は「人が住まなくなる」と一気に進む

家というものは、人が生活し、呼吸をすることで長持ちするようにできています。毎日窓を開けて風を通し、水道を使い、人の歩く振動があることで、家全体のバランスが保たれているのです。

誰も住まなくなった家は、驚くほど早く傷み始めます。 締め切られた家の中には湿気がこもり、壁紙にカビが生え、畳は傷み、木材は腐りやすくなります。また、水道管は使わないとサビが進行し、いざ水を通そうとした時に破裂してしまうこともあります。さらに、シロアリの被害なども、人が住んでいないと発見が遅れ、建物の土台からダメになってしまうことも少なくありません。

「将来、自分たちが住むかもしれない」「誰かに貸せるかもしれない」と思って家を残していても、数年間放置された家は、大掛かりな修繕(リフォーム)をしなければ住めない状態になってしまうことがほとんどです。その修繕費用に数百万円がかかるとなれば、活用を諦めざるを得なくなります。

2. 親の「認知症」による財産の凍結リスク

これが、空き家になる前に動くべき最大の理由と言っても過言ではありません。

親が施設に入所し、誰も住まなくなった実家を「売却して、親の介護費用に充てよう」と考えたとします。しかし、不動産を売却できるのは、原則として「名義人(所有者)本人」だけです。

もしこの時、親が認知症などを患っており、契約の内容を正しく理解する判断能力が低下していると、家を売る契約を結ぶことができなくなります。つまり、実家という財産が凍結された状態になってしまうのです。

このような場合、「成年後見制度」という法的な仕組みを利用して、親の代わりに財産を管理する人(後見人)を家庭裁判所に選んでもらう必要があります。しかし、この手続きには数ヶ月の時間がかかり、専門家に支払う費用も発生します。さらに、後見人の最大の目的は「本人の財産を守ること」であるため、「家を売る必要性が薄い」と判断されれば、家族の希望通りに売却できないこともあります。

親の判断能力がしっかりしているうちであれば、家をどうするかの選択肢はたくさんありますが、判断能力が低下してからは、できることが極端に制限されてしまうのです。

3. 実家の「片付け」という見えない重労働

長年暮らしてきた実家には、親の人生そのものと言えるほどの荷物が詰まっています。家具、家電、衣類、食器、古いアルバム、そして何が入っているかわからない段ボール箱の数々。

これらを親本人が不在の中で、子どもだけで片付けるのは、言葉で表現できないほどの労力がかかります。 「これは捨てていいのだろうか」「大切な書類が紛れているかもしれない」「この着物はどう処分すればいいのか」と一つひとつ確認しながらの作業は、体力面だけでなく、精神的にも大きく疲弊します。休日のたびに実家に通い、数ヶ月から半年以上かけてようやく片付けが終わったというお話もよく耳にします。

また、自分たちで片付けきれず、専門の整理業者に依頼した場合、一般的な一戸建ての家であれば、数十万円から、荷物の量によっては100万円近い費用がかかることも珍しくありません。この費用は、空き家になってから子どもが突然負担しなければならない大きな出費となります。

第2章:放置された空き家がもたらす「お金」と「近隣」の問題

「とりあえず今は誰も住まないけれど、固定資産税くらいなら払えるから置いておこう」と考える方もいらっしゃいます。しかし、現代の法律や社会情勢では、空き家をただ維持し続けること自体が大きなリスクとなっています。

年々厳しくなる空き家への法律と税金

日本の税金の仕組みでは、土地の上に「住宅」が建っていると、その土地の固定資産税が安くなるというルール(住宅用地の特例)があります。そのため、昔は「家を壊して更地にするより、空き家のまま残しておいた方が税金が安くて済む」と言われていました。

しかし、全国で危険な空き家が増えすぎたため、法律が大きく変わりました。 現在では、屋根が剥がれ落ちそうだったり、雑草が生い茂って放置されていたりするような管理が不十分な空き家は、自治体から「管理不全空き家」として指導や勧告を受けることがあります。この勧告を受けてしまうと、先ほどの「税金が安くなるルール」が取り消され、土地の固定資産税が翌年から跳ね上がる可能性があります。

さらに、行政からの再三の指導を無視して放置し続けると、最終的には行政が強制的に家を解体し、その解体費用(数百万円単位になることもあります)を所有者に請求するという事態に発展することもあります。「とりあえず残しておく」という選択は、将来的に大きな金銭的負担を背負い込むことになりかねないのです。

近隣トラブルの火種になる

長年住み慣れた地域であれば、ご近所の方々とも良好な関係が築けていることでしょう。しかし、空き家になり管理が行き届かなくなると、その関係にもヒビが入りかねません。

  • 庭の雑草や木の枝が、隣の敷地や道路に大きくはみ出してしまう。

  • スズメバチが巣を作ったり、野良猫やハクビシンなどの動物が住み着いたりする。

  • 台風の時に、古くなった屋根瓦やトタン板、雨戸などが飛んでいき、他人の家や車を傷つけてしまう。

  • 不法投棄の標的にされたり、放火や空き巣などの犯罪に狙われやすくなる。

万が一、放置した実家が原因で誰かにケガをさせたり、物を壊したりした場合、その責任(損害賠償)は家の所有者である親や、それを引き継いだ子どもが負うことになります。賠償額が高額になれば、ご自身の生活基盤まで揺るがしかねません。大切なご実家が、ご近所の方に迷惑をかける存在になってしまうのは、ご両親にとっても本意ではないはずです。

第3章:親が元気なうちにやっておくべき「5つの準備」

ここまでの話で、空き家になってから慌てるのではなく、事前の対策がいかに重要かをご理解いただけたかと思います。では、具体的に「今」何から始めればよいのでしょうか。日常の中で無理なく取り組める5つのステップをご紹介します。

1. 家と土地の「名義」を確認する

まず一番に確認したいのは、「実家の土地と建物は、誰の名義になっているか」ということです。

「当然、父親の名義だろう」と思っていても、調べてみたら実は亡くなった祖父やひいおじいさんの名義のままになっていた、というケースは非常に多く見受けられます。 名義が親の世代や祖父母の世代のままになっていると、いざ家を売ろうとした時や、誰かに貸そうとした時に、すぐに手続きができません。関係する親戚全員を探し出して、話し合い(遺産分割協議)をし、名義を変更する手続きをしなければならず、これだけで何ヶ月、時には何年もかかってしまうことがあります。

2024年(令和6年)4月からは、不動産を相続した時の名義変更(相続登記)が義務化されました。過去に相続して名義変更をしていない不動産も対象となり、正当な理由なく放置すると罰則の対象になる可能性があります。 まずは、毎年春頃に役所から届く「固定資産税の納税通知書」を見て、誰の名前で税金が請求されているかを確認してみてください。もし亡くなった方の名前になっていれば、早急に名義変更の手続きに向けて動く必要があります。

2. 土地の「境界(境目)」がはっきりしているか確認する

一戸建ての実家の場合、土地の「境界線」が明確になっているかどうかも非常に重要です。

昔からある土地では、隣の家との境目が「あの木から、このブロック塀まで」「水路の真ん中が境目」といった口約束のような形で曖昧になっていることがよくあります。 将来、家を売却する際には、隣の土地との境界線がはっきりと確定していることが求められるのが一般的です。

親が元気で、近所の方とも顔なじみであれば「お隣の〇〇さん、ここの境目はこの石のところでしたよね」と笑顔で確認し合うことができます。しかし、親が亡くなり、子どもが引き継いだ後に境界を決めようとすると、お隣さんから「そこはうちの土地だ」と主張され、思わぬトラブルに発展してしまうことがあります。

境界を示す石やコンクリートの杭、金属のプレート(境界標)が現地にあるかどうか、親が元気なうちに一緒に敷地を歩いて確認しておくことをお勧めします。見当たらない場合は、専門家(土地家屋調査士など)に依頼して境界をはっきりさせる測量を行うことも検討しましょう。

3. 権利証や重要な書類の「保管場所」を共有する

いざという時に慌てないために、家に関する重要な書類がどこにあるのか、親と子で共有しておくことが大切です。

  • 登記識別情報通知(昔でいう権利証)

  • 家の図面(間取り図や建築時の契約書)

  • 固定資産税の納税通知書

  • 火災保険や地震保険の証券

これらの書類は、将来家を売却したり、解体したり、あるいは災害で保険を請求したりする際に必ず必要になります。親が入院してしまってから「権利証はどこ?」と家中をひっくり返して探すのは本当に大変です。「もしもの時のために、大事な書類の場所だけ教えておいて」と、元気なうちに確認しておきましょう。

4. 「実家の片付け」をイベントとして少しずつ始める

先ほどお話しした通り、空き家になってからの片付けは本当に大変です。だからこそ、親が元気なうちに、少しずつ一緒に片付けを始めるのが最も効果的です。

ただし、「いつか捨てるんだから、今のうちに片付けてよ」といった言い方は絶対に避けてください。親にとっては、どれも大切な思い出の品であり、今の生活の一部です。不用意な一言が、親の心を傷つけ、片付けへの意欲を奪ってしまいます。

「地震が来た時に高いところの荷物が落ちてきたら危ないから、少し下ろそうか」 「つまづいて転んだら大変だから、廊下や階段の荷物だけ片付けよう」

このように、「親の今の安全と快適な暮らしのため」という理由で提案すると、親も納得して動きやすくなります。一気にやるのではなく、帰省した時の数時間だけ、引き出し一つだけ、使っていない客間だけ、といったように、無理のない範囲で進めていくのがコツです。

5. 実家の「将来」について家族で話し合う

最も大切なのは、実家を将来どうしたいのか、親の希望を聞き、子どもたちの考えをすり合わせておくことです。

  • 親の希望: 「ずっとこの家で暮らしたい」「もし自分がいなくなったら、売って孫の教育費にしてほしい」「代々受け継いだ土地だから、誰かに住んで守ってほしい」

  • 子どもの現状: 「今の仕事があるから実家には戻れない」「定年後なら戻って住みたい」「維持費が払えないから手放したい」

これらの思いがズレたままだと、後々大きな揉め事になります。「家をどうする?」と直接的に聞くのが難しければ、「最近、近所の〇〇さんの家が空き家になって草取りが大変らしいね。うちは将来どうしようか?」と、世間話の延長として話題に出してみるのも一つの方法です。

第4章:実家の将来の選択肢を知っておく

親との話し合いを進める上で、実家を将来どう扱うか、いくつかの選択肢を頭に入れておくと話がスムーズに進みます。主な選択肢は以下の4つです。

① 売却する(手放して現金化する) 最も多く選ばれる方法です。家と土地を売却して現金化し、親の介護費用や、子どもたちで分ける資金にします。維持費や税金の負担から完全に解放されるのが最大のメリットです。 建物がまだ新しく状態が良ければ「中古住宅」として売れますし、古すぎる場合は建物を解体して「更地(土地のみ)」として売却することが一般的です。更地にする場合は解体費用が先にかかりますが、そのまま(古家付きの土地)の状態で買い取ってくれる業者や買主を探す方法もあります。

② 賃貸に出す(人に貸す) 実家を手放したくない場合、人に貸して家賃収入を得るという方法があります。家は人が住むことで長持ちするため、建物の維持という面でも有効です。 しかし、人に貸すためには、水回り(キッチン、お風呂、トイレなど)や内装を現代の生活に合わせてきれいにリフォームする必要があり、最初にまとまった投資資金(数百万円単位)が必要になる点には注意が必要です。また、借り手が見つからなければ、リフォーム代だけがかかってしまうリスクもあります。

③ 家族の誰かが住む(引き継ぐ) 子どもや孫が実家に戻って住むという選択です。実家を残せる最も幸せな形かもしれません。 しかし、通勤や通学の利便性、古い家特有の冬の寒さや使い勝手の悪さをどう解消するかを現実的に考える必要があります。今の生活水準に合わせるためのリフォーム費用と、新しく家を建てる・買う費用を天秤にかけて、慎重に検討することが大切です。

④ 解体して駐車場や別の用途に使う 建物が古すぎて住めない、貸せないという場合、家を壊して土地だけを活用する方法です。立地によっては駐車場として貸し出したり、太陽光パネルを設置したりして収益を得ることができます。 ただし、建物を壊すと第2章で説明した通り、土地の固定資産税が上がる可能性があるため、事前に税金の計算と、駐車場等にした場合の収益のバランス(シミュレーション)をしておくことが欠かせません。

どの選択肢が一番良いかは、実家の場所、建物の状態、そしてご家族の状況によって全く異なります。だからこそ、時間的な猶予がある「空き家になる前」に、さまざまなシミュレーションをしておくことが大切なのです。

第5章:よくあるご質問(Q&A)

実家の将来について考える際、よく耳にする疑問についてお答えします。

Q. 親が「家は絶対に売らない」と頑なで、話し合いができません。どうすればいいですか?

A. 長年暮らした家への愛着は計り知れません。無理に手放す話をすると、親は「自分が見捨てられるのではないか」と不安を感じてしまいます。まずは「売る・売らない」の結論を出すのではなく、「もしもの時に、私たち子どもが困らないように、書類の場所や家の権利のことだけ教えておいてほしい」というスタンスで寄り添うことが大切です。「あなたのことが心配だから」という愛情を伝えることが、話し合いの第一歩です。焦らず、何度かに分けて少しずつ話題に出してみてください。

Q. 実家がかなり古く、雨漏りもしています。それでも売ることはできますか?

A. はい、売却することは十分に可能です。「そのままの状態(古家付きの土地)」として売り出し、買主様の方でご自身の好きなように解体したり、大改修(リノベーション)をしたりするという条件で売買するケースはたくさんあります。自分たちで無理に高額な解体費用を捻出する前に、まずは現状のままでどのような引き合いがあるかを確認してみることをお勧めします。

Q. まだ親は元気で実家に住んでいますが、今のうちから家の価格(査定)を調べてもいいのでしょうか?

A. はい、全く問題ありません。むしろ、親が元気なうちに「今の実家にはどれくらいの資産価値があるのか」を客観的な数字として把握しておくことは、将来の計画を立てる上で非常に役立ちます。価値を知ることで、「これくらいの資金になるなら、将来施設に入る費用に十分充てられるね」と、親自身が安心できる材料になることも多いです。査定をしたからといって、すぐに売らなければならないわけではありません。

Q. 「家族信託」という言葉を最近聞きますが、実家対策に有効ですか?

A. 非常に有効な選択肢の一つです。家族信託とは、親が元気なうちに、実家の管理や売却の権限を、信頼できる家族(子どもなど)に託しておく仕組みです。この契約を結んでおけば、万が一親が認知症になって判断能力が低下した後でも、託された子どもが親の代わりに実家を売却し、そのお金を親の介護費用に充てることができます。第1章でお話しした「財産の凍結リスク」を防ぐための有力な方法として、近年注目を集めています。

まとめ:手遅れになる前に、今日からできる一歩を

実家という場所は、ご両親にとって人生の拠点であり、ご自身にとってもたくさんの思い出が詰まった大切な場所です。だからこそ、「空き家」という誰の目も行き届かない寂しい状態にしてしまうのは、誰の望みでもないはずです。

実家の空き家対策は、空き家になる前に行動を起こすことがすべて(秘訣)です。

親の認知症対策、建物の劣化防止、名義や境界の確認、そして何より荷物の整理。これらはすべて、親が健康で、判断能力がしっかりしている「今」だからこそ、スムーズに行えることばかりです。

「まだまだ先のこと」と思わず、次に実家に帰省した時や、電話で話をする時に、ほんの少しだけ実家の未来について会話を始めてみてください。その小さな一歩が、将来の大きなトラブルや負担を防ぎ、ご家族全員の安心につながっていくはずです。

もし、実家の権利関係のこと、現在の価値、将来の選択肢について「何から手をつけていいかわからない」と迷われた時は、一人で抱え込まず、地域で長く経験を積んでいる身近な相談相手を頼ってみてください。長年の経験の中で培った知見が、少しでも皆様の不安を取り除くお役に立てれば幸いです。大切なご実家とご家族の未来が、明るく穏やかなものになることを心から願っております。

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