若者に広がる住宅ローン“50年” ― 建築コスト増で「毎月の支払い」優先の時代へ
本当に50年、大丈夫と言えるのか? ―
はじめに:50年ローンが「新しい常識」に?
最近、20代・30代の若い世代を中心に、「50年ローン」を選ぶ人が増えています。
背景にあるのは、建築コストの高騰と土地価格の上昇です。
背景にあるのは、建築コストの高騰と土地価格の上昇です。
2020年代に入ってから、住宅建築の坪単価は上昇を続け、
木造住宅でも坪80万円前後というケースも珍しくありません。
結果として、35年ローンでは月々の返済負担が重く、
「少しでも支払いを減らしたい」として返済期間を50年に延ばす動きが広がっています。
木造住宅でも坪80万円前後というケースも珍しくありません。
結果として、35年ローンでは月々の返済負担が重く、
「少しでも支払いを減らしたい」として返済期間を50年に延ばす動きが広がっています。
しかし、ベテランの不動産業者として声を大にして言いたいのは──
「住宅ローンは長くすればするほど“安心”とは限らない」
ということです。
ということです。
金融機関のリアル:「需要があるから商品化した」
銀行やネット銀行は、50年ローンの提供を次々と始めています。
背景には、
背景には、
低金利時代で金利収入が減少
若年層の借入ニーズの拡大
といった構造的な事情があります。
といった構造的な事情があります。
金融機関にとっては、返済期間が長ければ利息収入も長く確保できるため、
需要がある限り、商品として成立します。
需要がある限り、商品として成立します。
ただし、銀行も本音では「リスクが読めない」ことを理解しています。
50年先の金利動向や物価、不動産価値を正確に予測できる人は、誰もいません。
つまり、**金融機関が責任を持てるのは“貸す時点まで”**なのです。
50年先の金利動向や物価、不動産価値を正確に予測できる人は、誰もいません。
つまり、**金融機関が責任を持てるのは“貸す時点まで”**なのです。
若者のリアル:「月々払えるから大丈夫」は危険な錯覚
購入検討者の多くは、住宅ローンを「毎月の支払額」で考えます。
たしかに、50年返済にすれば35年返済より月々2~3万円安くなることもあります。
しかし、総返済額を見ると話は別です。
たしかに、50年返済にすれば35年返済より月々2~3万円安くなることもあります。
しかし、総返済額を見ると話は別です。
例)3,500万円を金利1.2%で借入した場合
35年返済:約4,200万円(総返済)
50年返済:約4,800万円(総返済)
なんと、総返済額は約600万円も多いのです。
「月々が楽になった分、将来を高く買っている」ことを忘れてはいけません。
「月々が楽になった分、将来を高く買っている」ことを忘れてはいけません。
ハウスメーカーのリアル:「月々○万円で建てられる」の裏側
ハウスメーカーや工務店の広告では、
「月々9万円で夢のマイホーム!」というキャッチコピーが増えました。
実はこの数字の裏には、50年返済を前提とした試算が含まれているケースもあります。
「月々9万円で夢のマイホーム!」というキャッチコピーが増えました。
実はこの数字の裏には、50年返済を前提とした試算が含まれているケースもあります。
つまり、
「支払いが楽に見えるように設計された数字」
なのです。
なのです。
本来なら、「家の性能」「将来の維持費」「資産価値」を踏まえて提案すべきところを、
「今の支払いだけ」で判断させてしまう。
これは、将来の生活設計を歪める危険があります。
「今の支払いだけ」で判断させてしまう。
これは、将来の生活設計を歪める危険があります。
FPのリアル:「50年ローンは“綱渡り”」
ファイナンシャルプランナーが最も懸念するのは、老後資金とのバランス崩壊です。
30歳で50年ローンを組めば、完済は80歳。
退職後も返済が続く計算です。
教育費、車の買い替え、親の介護、自分たちの老後資金――
人生の大きな出費が重なる中で、長期ローンは家計の自由度を奪う恐れがあります。
退職後も返済が続く計算です。
教育費、車の買い替え、親の介護、自分たちの老後資金――
人生の大きな出費が重なる中で、長期ローンは家計の自由度を奪う恐れがあります。
住宅の実寿命を無視した「50年返済」の矛盾
住宅そのものが50年間、何もせずに持つわけではありません。
ここを見落とすと、ローンだけ残って家が傷むという本末転倒な結果になりかねません。
ここを見落とすと、ローンだけ残って家が傷むという本末転倒な結果になりかねません。
| 項目 | 一般的な保証・耐用年数 | 備考 |
|---|---|---|
| シロアリ防蟻処理 | 約5年ごとに再処理 | 放置すると構造材腐食リスク |
| スレート屋根 | 10〜15年で塗装・補修 | 放置で雨漏り→下地腐食 |
| 外壁(サイディング) | 10〜15年で再塗装 | 目地シーリングの劣化に注意 |
| エコキュート | 10〜15年で交換 | 50年で3回交換の可能性 |
| 外構・給排水設備 | 20〜30年で補修・交換 | 経年劣化で配管トラブルも |
| 室内設備(キッチン・風呂) | 20年程度 | 更新費用は200万〜300万円規模 |
つまり、「50年のローン」と「50年持つ家」は別問題です。
住宅を維持するためには、10年ごとに100〜200万円程度のメンテナンスが必要。
トータルでは1,000万円近い維持費が発生することもあります。
住宅を維持するためには、10年ごとに100〜200万円程度のメンテナンスが必要。
トータルでは1,000万円近い維持費が発生することもあります。
ベテラン不動産業者からの警告
私が長年現場を見てきて痛感するのは、
「50年ローンは、未来を担保にした“安心の錯覚”だ」
ということです。
ということです。
確かに、今の月々の支払いは楽になる。
でも、それは“将来の自分”が負担を引き受けているだけです。
でも、それは“将来の自分”が負担を引き受けているだけです。
家は「買える額」ではなく、「返せる額」で選ぶ。
これを忘れてしまうと、
・家の修繕費を出せずに老朽化が進む
・返済とリフォーム費が重なり家計が破綻する
・売ろうにも資産価値が下がって残債が消えない
といった現実が待っています。
これを忘れてしまうと、
・家の修繕費を出せずに老朽化が進む
・返済とリフォーム費が重なり家計が破綻する
・売ろうにも資産価値が下がって残債が消えない
といった現実が待っています。
結論:35年返済はまだ“標準”。50年は安易に選ぶべきでない
「50年ローン」という言葉だけを聞くと、時代の流れに思えるかもしれません。
しかし、冷静に見れば、それはリスクを未来に押し出す仕組みです。
しかし、冷静に見れば、それはリスクを未来に押し出す仕組みです。
住宅ローンを考えるときは、
35年返済+リフォーム積立
30年返済+中古+リノベーション
共働き時代に繰上返済を前提にする
といった現実的な設計をすることが大切です。
といった現実的な設計をすることが大切です。
最後に:
私は不動産業に携わって37年、
何百件もの住宅購入・売却・相談を見てきました。
その経験から言えるのは――
何百件もの住宅購入・売却・相談を見てきました。
その経験から言えるのは――
「家は人生を支えるものであって、縛るものではない」
50年ローンという数字の“安心感”に惑わされず、
ご自身と家族の将来を見据えた、地に足のついた住宅選びをしていただきたい。
それが、私からの率直なアドバイスであり、心からの願いです。
ご自身と家族の将来を見据えた、地に足のついた住宅選びをしていただきたい。
それが、私からの率直なアドバイスであり、心からの願いです。





