株式会社ジャスティスは山口県熊毛郡田布施町の不動産会社です。不動産売買や住宅購入サポート、賃貸情報のご提供や遺品整理のお手伝いなどを承っております。

令和8年10月26日 苦情解決業務研修会

令和8年度中国地区苦情解決業務研修会に参加し 境界確認と契約書の重要性を再認識しました

家を建てたり、新しい住まいを探したりすることは、多くの方にとって人生の大きな節目となる出来事です。一方で、不動産取引は高額になりやすく、思いがけない行き違いやトラブルが生じることもあります。

私は公益社団法人不動産保証協会山口県本部の取引相談委員長として、地域の不動産取引に関する相談や苦情に向き合っています。日々の相談対応では、当事者双方の話を丁寧に確認しながら、解決に向けた手がかりを探ることの大切さを実感しています。

2026年10月26日に岡山県のホテルグランヴィア岡山で開催された令和8年度中国地区苦情解決業務研修会に、山口県本部取引相談委員長として参加しました。研修では、実際の不動産取引で生じた苦情事例や契約書類をもとに、調査や対応の際に留意すべき点を学ぶ機会となりました。

令和8年10月26日 苦情解決業務研修会 レジメ

今回のブログでは、研修会で取り上げられた事例の中から、マイホーム用地の購入に関する事例を取り上げます。不動産売買契約書と重要事項説明書を見比べながら、境界や法令上の制限など、見落としたくない確認ポイントをわかりやすくご紹介します。

書類に記載があっても、内容の理解や確認が十分でなければ、後に思わぬ問題につながることがあります。また、問題が生じた後は、『各地方本部の取引相談窓口』に相談しても希望どおりの金銭的な解決に至るとは限りません。だからこそ、契約前の確認がとても重要です。できるだけ専門用語を避けながら、これから土地購入を考える方に役立つ形でお伝えします。

事例の背景 資格があっても見落としやすいポイント

今回の事例でトラブルに直面した買主は、住宅取得を予定していた方でした。ご本人は宅地建物取引士の資格を持っていましたが、それでも契約書類に潜む問題を見抜くことは簡単ではありませんでした。知人の工務店を通じて不動産会社を紹介され、土地購入の手続きが進められました。

2023年9月10日、買主は名古屋市内の土地について売買契約を結びました。登記簿上の面積は423.11平方メートル、売買代金は2460万円で、契約時に手付金10万円を支払い、残代金2450万円は2023年11月30日の引渡し日に支払う予定とされていました。

このときの不動産売買契約書と重要事項説明書には、特約として、引渡しまでに売主の負担で建物を解体すること、そして売主の負担で確定測量を行うことが記載されていました。

売主からは、境界について大まかな説明があったものの、契約書には引渡しまでに売主負担で確定測量を行うことが明記されていました。そのため、買主は必要な手続きが進むものと受け止め、契約を進めることになりました。

ところが、その後、契約書の記載どおりには進まない問題が次々と明らかになっていきます。

境界が確定しないまま進んだ引渡し

不動産会社は土地の測量を土地家屋調査士に依頼しましたが、北側隣地の所有者が立会いに応じなかったため、約束されていた2023年11月30日までに確定測量を終えることができませんでした。

土地取引では、隣地との境界がどこにあるのかを確認し、関係者の立会いのもとで境界標が設置されているかを確かめることが重要です。境界が未確定のままでは、残代金の支払いや引渡しの前に慎重な確認が必要になります。

ところが、この事例では、買主と売主の了承のもと、測量が終わっていない段階で2023年12月19日に残代金の支払いと仲介手数料の精算が行われ、引渡しが進められました。

その後、2024年5月16日になって隣地所有者の立会いのもとで境界標が設置されましたが、そこで明らかになったのは、当初想定されていた位置より東側へ約80センチずれていたという事実でした。面積では約12.4平方メートルの差があり、買主が想定していたより土地が狭い結果となりました。

さらに、買主は境界が確定する前の2025年4月中旬、境界付近の雑木を自分の土地にあるものと考えて伐採を依頼し、30万円を支払っていました。しかし境界確定後、その雑木は隣地側に生えていたことが分かりました。

重要事項説明書に記載のなかった擁壁と排水管

問題は土地の広さだけではありませんでした。実際には、土地の形状や排水設備にも見過ごせない課題がありました。

この土地は東側が低く、西側の売主所有地との間に大きな高低差がある地形でした。境界付近には擁壁が設けられており、建築にあたっては崖に関する法令上の制限にも注意が必要な土地でした。

さらに、その擁壁まわりには雨水を流すための側溝や排水管が設置されており、売主側の土地から買主側へ雨水が流れ込む状態が見られました。買主は当初、この側溝は自分の土地にあるものと考えていましたが、測量の結果、売主側の土地にあることが分かりました。

ここで問題となったのが、契約時に交付された重要事項説明書の内容です。重要事項説明書は、物件に関する法令上の制限や設備の状況などを買主に伝えるための大切な書類です。ところが、この事例では、土地利用に大きく関わる崖に関する制限についての記載がなく、排水施設の項目にも隣地からの排水管の状況や取扱いは記載されていませんでした。

その結果、安全に建築するための排水工事や周辺部分の補強工事が必要となり、買主には当初想定していなかった追加費用が生じることになりました。

連絡が取れなくなった不動産会社と金銭面の問題

購入者は、これらの問題について不動産会社に対し、説明を求めるとともに、売主と調整のうえで排水管の取扱いを検討してほしいと連絡を試みました。しかし、その後、不動産会社とは連絡が取りにくい状態になりました。

さらに、この不動産会社とは、土地取引とは別に、購入者が所有していたマンション売却に関する金銭のやり取りもありました。不動産会社は、仲介手数料の前払いという説明のもとで金銭を受け取っていましたが、その後、実際の手数料との差額について返還を求めても、円滑な解決には至りませんでした。

こうした経緯も重なり、購入者は不動産会社との間で十分な話し合いができないまま、問題の解決が進まない状況に置かれることになりました。

行き詰まった購入者は、不動産会社が加入する保証協会の地方本部取引相談窓口に苦情を申し立てることになります。

地方本部の見解と保証協会の最終判断

購入者からの苦情申立てを受け、まず地方本部の取引相談委員会で事実関係の確認と検討を行いました。その結果、隣地からの排水設備の存在や雨水の流入、崖に関する制限などは、土地利用に大きく関わる重要な事項であり、重要事項説明書への記載や説明が十分であったかについて課題があると考えました。

そのため、地方本部としては、支払済みの仲介手数料の一部返還が相当ではないかとの見解を整理し、保証協会へ上申しました。

しかし、保証協会での審査の結果、この上申内容は非承認となり、購入者への金銭的な支払いには至りませんでした。

地方本部では、当事者双方の事情を踏まえながら、解決に向けた現実的な着地点を探ります。一方で、保証協会での判断は、制度上の要件に照らして厳格に行われます。そのため、地方本部で問題があると考えられた場合でも、最終的に支払いが認められないことがあります。

今回の事例は、問題が起きた後に地方本部の取引相談窓口へ相談しても、失った時間やお金を取り戻せるとは限らないことを示しています。だからこそ、契約前や引渡し前の確認が何より重要です。

この事例から学ぶ、安全な住まい探しのポイント

このようなトラブルを防ぐために、契約前や引渡し前に意識しておきたい点があります。ここでは、特に大切な三つのポイントを整理します。

契約書の記載だけで安心しない

契約書に測量や解体の約束が書かれていても、予定どおりに進まないことがあります。境界確認や確定測量が終わり、現地と図面の内容が一致していることを確認するまでは、残代金の支払いや引渡しを慎重に判断することが大切です。

書類と現地の両方を確かめる

重要事項説明書に記載がないからといって、現地に問題がないとは限りません。高低差のある土地では、擁壁の状況や雨水の流れ、排水管の位置なども確認したいところです。少しでも気になる点があれば、その場で質問し、内容を書面でも確かめることが重要です。

問題を防ぐ意識を持つ

保証協会には苦情解決や弁済業務の仕組みがありますが、相談すれば必ず希望どおりの金銭的解決につながるとは限りません。苦情の申出や相談は各地方本部が窓口となっており、問題が起きた後の対応には限界もあります。だからこそ、契約前の確認と、疑問を残したまま進めない姿勢がとても重要です。

 

住まい探しは、多くの方にとって人生の大切な節目です。気になる点をそのままにせず、契約前や引渡し前に一つひとつ確認しながら手続きを進めることが、安心して新しい暮らしを始めるための第一歩になると感じます。

 

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