山口県平生町へ移住!住まい・子育て・仕事の支援策を徹底解説【13市6町めぐり】
みなさん、こんにちは。山口県から委託を受けた『住まいのコンシェルジュ』として、県内13市6町の移住に向けたアプローチを毎回ひとつずつご紹介していく連載ブログ。今回は、山口県の東南部に位置する平生町(ひらおちょう)をピックアップします。
移住を検討し始めたばかりの方にとって、「どの自治体が自分たち家族に合っているのか」「どんな支援があるのか」を比較するのは大変な作業ですよね。今回は、ただ自治体のホームページにある情報を並べるのではなく、「なぜ平生町はそのような支援を行っているのか」「それが移住者にとってどんなメリットになるのか」という裏側の狙いまで、わかりやすく深掘りしていきます。
これから地方移住を考えている方にとって、自治体の本気度を見極めるための良い学びになるはずです。ぜひ最後までじっくりとお読みください。
1. 平生町ってどんなところ?直面する課題と町の決意
まずは、平生町の基本情報からおさらいしましょう。
平生町は、海と山に囲まれた総面積34.54平方キロメートルの半島の町です。一年を通じて暖かく、雨が少ない「瀬戸内海式気候」に恵まれており、その美しい風景と穏やかな気候から「瀬戸内のイタリア」とも称されています。都会の喧騒から離れ、のんびりとしたスローライフを送りたいと考える方にとっては、まさに理想的な環境が広がっています。
しかし、良い面ばかりではありません。平生町は今、日本中の多くの地方自治体が抱える「人口減少」と「少子高齢化」という大きな壁の最前線に立っています。
2023年時点の人口は10,896人。過去10年間で実に15.4%もの人口が減少しました。また、町民の高齢化率は43.2%に達しており、このまま推移すれば2050年には推計人口が6,667人まで減ってしまうという厳しい予測が出ています。人が減れば、地域のお祭りや草刈りといったコミュニティが維持できなくなり、空き家が増え、お店も減っていくという悪循環に陥ってしまいます。
この「存亡の危機」とも言える状況に対し、平生町はただ指をくわえて見ているわけではありません。町は『アイ・ラブ・ひらお』定住プロジェクトという名前で、とても戦略的で本気の移住・定住サポートを展開しています。
ここからは、「住まい」「子育て・教育」「仕事」「コミュニティ」の4つの視点から、平生町がどのように移住者を迎え入れようとしているのかを詳しく見ていきましょう。
2. 失敗しない移住の第一歩!1日1,000円の「移住体験住宅」
移住を考える際、一番怖いのは「思っていた暮らしと違った」という理想と現実のギャップです。平生町では、このミスマッチを防ぐために、実際の町民としての暮らしを試せる「移住体験住宅」を用意しています。
ホテルや旅館のように、Wi-Fiが飛んでいて、ふかふかのタオルや美味しい食事が用意されているわけではありません。利用者は自分で地元のスーパーに行き、食材を買い、自炊をして、ゴミ出しのルールを確認しながら過ごすことになります。
実際に利用した方からは、「1日1000円と安く、一軒家できれい」「ホテルとは異なり、リアルな移住体験ができる」と非常に高い評価を受けています。移住活動の拠点として、これほど心強いものはありません。
3. 家計を助ける「戦略的」な住まいと空き家の支援策
移住先が決まったら、次はお金のかかる「住まい探し」です。平生町は、ここでも若い世代や子育て世代を強力に後押しする補助金を用意しています。
・三世代で同居・隣に住む場合: 50万円補助
また、親の近くに住む(Uターンや三世代同居)ことを手厚く支援するのは、子育ての負担などを家族内で助け合える環境を作りたいという思いからです。この制度のおかげで、数年間で100人以上の方が制度を利用して平生町に転入してきており、確かな実績を上げています。
実際の物件情報を見ると、敷地が広い5DKの古民家が500万円から350万円に値下げされていたり、駅まで車で7分の中古住宅が150万円、田畑付きの古民家が280万円、さらには山林付きの古民家が30万円で取引されるなど、都会では考えられないような価格で住まいを手に入れることができます。
そこで平生町は、「空家バンク活用定住補助金」の中で、不要物の撤去にかかる費用を全額(上限12万円〜24万円)補助してくれます(町内の業者にお願いすることが条件)。空き家流通の一番のストッパーを直接取り除いてくれるこの制度は、移住者にとってとてつもなく大きな助けになります。
さらに、30歳から39歳の夫婦には最大30万円、夫婦ともに30歳未満の場合は最大60万円が補助される「結婚新生活応援事業」もあります。年齢が若いほど補助額が上がるのは、早い段階での結婚や出産といったライフイベントを応援し、将来の町を支える子どもたちを増やしたいという長期的な投資の表れです。
4. 子育て世代が感動する!独自の教育環境とセーフティネット
地方へ移住する子育て世代が最も気にするのが、「教育の質」と「医療・保育にかかるお金」です。平生町は、妊娠したときから高校を卒業するまで、途切れることのないサポート体制を敷いています。
通常、公立の小学校は住んでいる場所によって通う学校が決められていますが、この制度を使えば、条件を満たせば町内のどこに住んでいても佐賀小学校に通うことができます(各学年5人程度の募集)。
実際に移住体験に訪れた家族が佐賀小学校を見学し、「先生の温かい雰囲気を感じて移住を決めた」というケースもあるほど、この学校の存在自体が平生町の大きな魅力になっています。
・独自の給付金: 物価高騰の影響を受ける子育て世帯へ、町独自で児童1人あたり5,000円を支給するなど、スピード感のある対応を行っています。
5. 移住先でどう稼ぐ?起業支援と第一次産業のエコシステム
町内で新しくビジネスを立ち上げる人には、「起業支援事業補助金」が用意されています。金融機関からの借り入れがある場合は最大100万円、ない場合は最大50万円が、店舗の改装費や広告宣伝費として支給されます。
これにより、事業がすぐに潰れてしまうリスクを減らせるだけでなく、お店をオープンする前から地元の有力者たちと強い人間関係(コネクション)を築くことができます。移住者が地域でスムーズに商売を始められる最高の仕組みと言えるでしょう。
平生町では、有機質たっぷりの土づくりにこだわり、化学肥料や農薬を使わずに育てた安全でおいしい農産物を「三ツ星野菜=HIRAO 100%」という独自のブランドで展開しています。これらは、町内の「ひらお特産品センター」で新鮮な海産物(春のカレイ、夏のタコ、冬のワタリガニなど)と一緒に販売されています。
自然環境に配慮したオーガニック農業は、都会から移住してくる健康志向の方のニーズにぴったりと合致しています。未経験からでも就農しやすいように、県と町が協力して事業費を補助する制度や、将来一人前の漁師として独立するための研修制度も用意されており、自然を相手に生計を立てるパスポートがしっかりと用意されています。
展望台から瀬戸内海を一望できるこの場所は、平生町が自然環境と共生する「未来志向の町」であるというブランドイメージを作り上げており、環境問題に関心の高い移住者への強いアピールポイントになっています。
6. 町民の「自治の力」と温かいおもてなしの心
制度やお金の支援だけでは、人はその土地に根付きません。最後に移住の決め手となるのは、「ご近所さんとの人間関係」です。
行政にすべてお任せするのではなく、「自分たちの地域は自分たちで良くしていこう」という住民の自治意識が高いからこそ、新しく入ってきた移住者も地域の活動に参加しやすく、溶け込みやすい土壌ができあがっています。
江戸時代の初期、海をせき止めて約140ヘクタールもの広大な土地を造り出した「平生開作(ひらおかいさく)」という大プロジェクトがありました。このとき、雨水を外に排出するために造られた「南蛮樋(なんばんひ)」という水門は、当時のオランダの最先端技術を取り入れたものでした。
古くから、自分たちの土地を発展させるために、外からの新しい技術や知識、そして人を柔軟に受け入れてきた「進取の気性(新しいことに取り組む精神)」が、平生町の歴史には刻まれています。このオープンなDNAが、現代を生きる町民にも受け継がれているのです。
「生活するのに最高なものがすべて揃っている」「きれいな海、美味しい新鮮な魚と野菜。私たちにとってここは宝の町です」
都会の「ショッピングモールがたくさんある」といった消費の便利さから離れ、自然との調和、食の豊かさ、そして何より「人の温かさ」という本質的な豊かさに気づかせてくれる。それが平生町の持つ最大の魅力です。
7. まとめ:平生町が提示する「これからの地方暮らしの正解」
いかがでしたでしょうか。山口県平生町が展開する移住・定住へのアプローチは、単なる思いつきの制度の寄せ集めではありません。
5. 歴史に裏打ちされた寛容なコミュニティが移住者を優しく包み込む。
行政による「緻密に計算された制度の支援」と、地域社会が持つ「温かいおもてなしの心」が、完璧な両輪として機能していることがお分かりいただけたかと思います。
リモートワークが普及し、どこに住むかを自由に選べるようになった今の時代。「何もない」ように見えて「生きていくために最高のものが揃っている」平生町のパッケージは、これから地方移住を考える皆様にとって、間違いなく有力な選択肢の一つになるはずです。





