2027年の法改正で実家や古い家はどうなる?税金とルール変更をわかりやすく解説
2027年という年が、土地や建物を持つ人にとって一つの大きな区切りになることをご存知でしょうか。
実家を親から受け継いだけれど誰も住んでいない、親戚が残した古いアパートの管理で悩んでいる、あるいはこれから実家をどうしようか家族で話し合っている。そんな方々にとって、2027年は「それまでに決断しておかないと損をしてしまうかもしれない」大切な時期にあたります。
不動産の税金や法律と聞くと、なんだか難しくて自分には関係ないと思われがちです。しかし、実は私たちの暮らしや、親から受け継いだ大切な財産に直接関わってきます。特に、建てられてから年月が経った古い家やアパート(いわゆる築古物件)をお持ちの方にとっては、これからの数年でルールが大きく変わるため、今のうちから少しずつ準備をしておくことがとても大切です。
この記事では、不動産業界に長く身を置き、地域にお住まいの方々のさまざまな住まいの悩みと向き合ってきた経営者の視点から、2027年に向けて何がどう変わるのか、そして私たちが日常の暮らしの中でどう備えていけばいいのかをお伝えします。専門用語や難しい言葉はなるべく使わず、毎日の生活のなかで想像しやすいようにお話ししていきます。
1. アパートを建てれば税金が安くなる、は通用しなくなる?「5年ルール」の導入
これまで、「相続のときの税金を安くするために、持っている土地にアパートを建てましょう」とか、「現金を不動産に換えておきましょう」という話を耳にしたことがある方も多いと思います。実際に、アパートを建てたり買ったりすると、現金で持っているよりも財産の価値が低く見積もられる仕組みがあり、税金の負担を減らす方法として当たり前のように使われてきました
しかし、2027年(令和9年)1月1日から、この仕組みに大きな制限がかかることになります。それが、新しく始まる「5年ルール」です。
具体的にどういうことかというと、「亡くなる前の5年以内に買ったり建てたりしたアパートなどの賃貸物件は、これまでのような安い評価ではなく、買ったときの金額に近い高い評価で計算しますよ」という決まりです。つまり、税金を減らす目的で慌てて亡くなる直前にアパートを建てても、その効果がなくなってしまうということです。
このルールができた背景には、一部のお金持ちが亡くなる直前に何億円も借金をして高いマンションを買い、税金を極端に少なくするという「行き過ぎた節税」が裁判で問題になったことがあります。これを防ぐためにルールが厳しくなったのですが、その影響はごく普通の家庭にも及ぶ可能性があります。
たとえば、親が持っている古いアパートが老朽化してしまい、雨漏りもするから新しく建て替えよう、となったとします。もし建て替えた後、5年以内に親が亡くなってしまった場合、この新しいルールに引っかかってしまう可能性があるのです。古い建物のままなら税金が安く済んだのに、良かれと思って建て替えたばかりに、かえって残された子どもたちの税金負担が重くなってしまう。そんな悲しい事態が起こり得ます。
ただし、安心できる材料もあります。それは「例外(経過措置)」が用意されていることです。もし、親が5年以上前からずっと持っている土地にアパートを新しく建てたのであれば、この新しいルールの対象からは外れ、これまで通りの計算をしてもらえる見込みです。また、新しくアパートを買ったり建てたりしてから5年が無事に過ぎれば、その物件は元の安い評価に戻ります。
だからこそ、もしアパートの建て替えや不動産の購入を考えているのなら、「とりあえず慌てて建てる」のではなく、「この先5年間はどうなるか」「長期的に見て本当に家族のためになるのか」をじっくり考える必要があります。不動産は、買ったり建てたりして終わりではありません。その後もずっと管理を続け、次の世代へ引き継いでいくものです。目先の税金を減らすことだけにとらわれず、無理のない計画を立てることが、これからの時代はより一層大切になってきます。
2. 誰も住まない実家をどうする? 空き家を売るときの「3,000万円特別控除」の期限
次に、多くの方が直面する「空き家」の問題についてお話しします。
両親が亡くなり、誰も住まなくなった実家。思い出が詰まっているからとそのままにしておきたい気持ちはよくわかります。しかし、家は人が住まないとあっという間に傷んでしまいます。風通しが悪くなり、カビが生え、庭には草木が生い茂り、ご近所の方に迷惑をかけてしまうことも少なくありません。さらに、誰も住んでいなくても、毎年必ず固定資産税という税金を払い続けなければなりません。
こうした空き家を少しでも減らすために、国は「実家を相続して空き家になった場合、それを売ったときに出る利益から最大3,000万円を差し引いて、税金を安くしますよ」という制度を用意しています。これが「相続した空き家の3,000万円特別控除」と呼ばれるものです。
家や土地を売って利益(買ったときよりも高く売れた分の差額)が出ると、通常はその利益に対して約20%の税金がかかります。たとえば1,000万円の利益が出たら、約200万円を税金として納めなければなりません。しかし、この特例を使えば利益から3,000万円を引いてくれるので、ほとんどのご家庭で税金がゼロになります。とてもありがたい制度です。
ただし、ここにも2027年という壁が立ちはだかります。この制度が使えるのは、今の法律のままでは「2027年12月31日までに売った場合」までと決められているのです。
この特例を使うためには、いくつかクリアしなければならない条件があります。 最も重要なのが「昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた家」であることです。この時期より前に建てられた家は、古い耐震基準で作られているため、地震に弱い可能性があります。国としては、こうした地震に弱い古い空き家をそのまま放置せず、安全な状態にしてほしいという狙いがあります。
そのため、この特例を使って実家を売るためには、原則として「耐震工事をして現在の基準を満たすようにして売る」か、あるいは「古い家を完全に取り壊して、更地(建物のない平らな土地)にしてから売る」のどちらかを選ぶ必要があります。最近の法律の変更で、売った後に買ってくれた人が工事や解体をしてくれる場合でも認められるようになりましたが、いずれにしても「古い家のまま、何も手を出さずに売る」だけでは特例を使えない仕組みになっています。
さらに気をつけなければならないのが、時間の問題です。「相続が始まってから(親が亡くなってから)3年が経過した年の年末まで」に売却を終わらせなければならない、という別の期限もあります。
たとえば、2024年に親が亡くなり実家を相続した場合、3年後の2027年の年末までに売却の手続きをすべて完了させなければ、この特例は使えません。家の片付けをして、仏壇を移して、兄弟で話し合って、家をどうするか決めて、買い手を見つけて……と考えると、3年という時間は決して長くはありません。
「いつかは片付けなきゃ」と思っているうちに、特例の期限である2027年が過ぎてしまったり、3年の期限が切れてしまったりすると、余計な税金を払うことになり、手元に残るお金が大きく減ってしまいます。空き家をどうするかは、家族の気持ちの整理も必要で、すぐに決められるものではありません。だからこそ、まだ少し猶予がある今のうちから、家族で話し合いを始めておくことが、後悔しないための第一歩です。
3. 空き家を放置すると税金が跳ね上がるリスク
空き家の話題に関連して、もう一つ知っておいていただきたい重要なルールがあります。それが「固定資産税の住宅用地の特例」と呼ばれるものです。
土地の上に人が住むための家が建っていると、その土地の固定資産税は最大で6分の1まで安くなるという仕組みがあります。これがあるために、「家を壊して更地にすると税金が6倍に上がってしまうから、ボロボロになってもそのままにしておこう」と考える方が非常に多くいらっしゃいました。
しかし、国や自治体もこのままではいけないと動き出しました。倒壊する危険があるようなひどい空き家(特定空家)に指定されると、この「税金が6分の1になる恩恵」を取り上げるという決まりができました。さらに最近の法律改正によって、特定空家の一歩手前である「管理不全空家(このまま放置すれば危険になる空き家)」に指定されただけでも、改善の勧告を受けると税金の恩恵が外され、翌年から土地の固定資産税が跳ね上がってしまうようになったのです。
つまり、「お金がかかるから」と空き家を放置しておくことは、ご近所に迷惑をかけるだけでなく、自分自身の首を絞めるほど金銭的な負担が大きくなるリスクを抱えることになります。2027年に向けて、行政の目もますます厳しくなっていくことが予想されます。
4. 家が古くなっても税金は下がらない? 2027年の「固定資産税の評価替え」
家や土地を持っていると、毎年春ごろに市役所や町役場から手紙が届き、「今年の固定資産税はこれくらいです」とお知らせが来ますよね。この税金のもとになる「この土地や建物の価値はいくらか」という評価額は、ずっと同じではありません。世の中の景気や物価の変化に合わせて、3年に1度、見直しが行われます。これを「評価替え」と呼びます。
直近では2024年にこの見直しが行われました。そして、次の見直しの年が2027年です。
ここで知っておいていただきたいのは、古い家の税金に関する誤解です。 「家は古くなれば価値が下がるから、固定資産税もどんどん安くなって、最終的にはタダみたいになるんじゃないの?」と思っている方が結構いらっしゃいます。しかし、実はそうではありません。
確かに家が新しいうちは、築年数が経つにつれて建物の評価額は少しずつ下がっていきます。しかし、評価額には「どんなに古くなっても、これ以上は下げませんよ」という最低ライン(下限)が決められています。一般的な木造の家屋の場合、新築時の2割(20%)まで下がると、それ以降は築30年になろうが築50年になろうが、税金はもうそれ以上安くなりません。
つまり、親から受け継いだ古い家は、すでにこの最低ラインに達していることが多く、家がどんどん傷んでいくのに毎年同じ金額の税金を払い続けなければならない状態になっているのです。
さらに、2027年の評価替えでは、世の中の流れを反映した少し違う視点が入ってくる可能性があります。それは「家の性能」です。 最近は電気代の高騰や環境への配慮から、断熱性が高くてエネルギーを無駄にしない「省エネ住宅」が求められるようになっています。2025年からは、新しく家を建てる際には厳しい省エネ基準を満たすことが義務付けられます。
これにともない、家を評価する基準も「単に築年数が新しいか古いか」だけでなく、「その家がどれくらい環境に優しく、快適に暮らせるか」という質が重視される方向に少しずつシフトしています。しっかりと断熱のリフォームや耐震工事をした家は価値が保たれる一方で、何も手入れをしていない古い家は、住みづらいだけでなく資産としての価値も厳しく見られる時代になってきています。
2027年の評価替えの時期は、「このまま毎年税金を払い続けて古い家を持ち続けるのか」、それとも「リフォームをして快適に住めるようにするのか」、あるいは「思い切って手放すのか」を考える良いきっかけになるはずです。税金の通知書が届いたら、ただお金を払うだけでなく、「この家をこれからどうしていくか」を一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。
5. 古いマンションの救世主になるか? 法律が変わり、建て替えがしやすくなる
ここまでは一戸建てやアパートを中心にお話ししてきましたが、マンションにお住まいの方にとっても、2027年頃は大きな変化が目に見えてくる時期です。
日本中には、建てられてから40年、50年と経った古い分譲マンションがたくさんあります。建物が古くなると、あちこちが傷んで大規模な修理が必要になったり、いっそのこと新しいマンションに建て替えようという話が出たりします。しかし、マンションにはたくさんの人が住んでいて、それぞれ考え方もお財布の事情も違いますから、意見をまとめるのは本当に大変です。
これまでの法律(区分所有法という、マンションのルールを決めた法律)では、マンションを建て替えるためには、住んでいる人たち(持ち主)の「5分の4以上」の賛成が必要でした。しかも、「誰が住んでいるのかわからない」「連絡がつかない」という人がいると、その人は自動的に「反対」として数えられてしまうため、建て替えの話がまったく前に進まないという問題がありました。高齢化が進み、持ち主が亡くなって相続した人がどこにいるかわからない、というケースが増えているからです。
このままでは、ボロボロになって地震で倒れてしまうかもしれないマンションが街にあふれてしまう。そんな危機感から、法律が大きく見直されることになり、2026年4月から新しいルールがスタートします。
新しいルールでは、連絡が取れない人や所在がわからない人を、裁判所の手続きを経て「人数の計算から外す」ことができるようになります。また、建物の痛みが激しく、命の危険があるような場合には、建て替えに必要な賛成の人数を減らすことができるようになります。
2026年の春にこの新しい法律が始まると、これまで「反対者が少しいるから」「連絡がつかない人がいるから」と諦めていた古いマンションで、いよいよ本格的に建て替えや大規模な修繕に向けた話し合いが動き出すでしょう。その動きが具体的に形になり始めるのが、まさに2027年頃になると予想されます。
もし、ご自身やご両親が古いマンションに住んでいらっしゃるなら、これから管理組合(マンションの持ち主の集まり)から、これまで以上に重要なお知らせや話し合いの案内が届くようになるはずです。「難しい話だから他の人に任せておこう」と無視するのではなく、自分たちの住まいがこれからどうなるのか、しっかり関心を持って参加することが、安心できる暮らしを守るためにとても大切です。
2027年に向けて、私たちが今からできること
ここまで、2027年に向けて変わっていく不動産のルールや税金についてお話ししてきました。
「5年ルール」によって、直前になって慌ててアパートを建てるような対策は通用しなくなります。空き家を売って税金を安くする特例も期限が迫っています。空き家を放置すれば固定資産税が跳ね上がるリスクがあり、古いマンションは新しい法律のもとで、これからどう生き残っていくかの決断を迫られます。
いろいろと難しく聞こえるかもしれませんが、すべてに共通している一番大切なことがあります。それは、「早めに家族で話し合い、長期的な視点を持つこと」です。
不動産のことでトラブルになったり、損をしてしまったりする原因の多くは、「親が元気なうちに話し合っていなかった」「亡くなってから慌てて手続きをしようとしたら、期限に間に合わなかった」という時間の不足にあります。
「うちには大した財産はないから関係ない」「まだ先の話だから大丈夫」と思わずに、お盆やお正月など、家族が集まるタイミングで、少しだけ家の話をしてみてください。
「この家、将来どうしようか」 「もし空き家になったら、誰が管理する?」 「古いアパートがあるけれど、建て替えるべきか、売るべきか」
そんな日常の会話から始めるだけで十分です。
日々地域の方々からのご相談を受けている立場からすると、お客様が抱える不安や悩みは、決して他人事ではありません。みなさん一人ひとりが、大切な家族のためにどうするのが一番良いのか、真剣に悩んでいらっしゃいます。
もし、ご家族だけでは答えが出ないとき、何から手をつければいいのかわからないときは、どうぞ一人で悩まずに、信頼できる地元の相談窓口を頼ってください。地域の状況をよく知り、親身になって話を聞いてくれる場所が必ずあります。皆さまの暮らしが少しでも穏やかで安心できるものになるよう、私たちがしっかりとお手伝いをさせていただきます。
2027年という大きな変化の波が来る前に、まずは今お持ちの家や土地の状況を確認し、将来について考える時間を作ってみてください。その小さな一歩が、数年後の大きな安心につながるはずです。何か気になることがありましたら、ぜひ一度お気軽にご相談ください。





