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山口県阿武町位置図

山口県阿武町への移住 小さな町の工夫と暮らしの魅力

こんにちは。山口県から委託を受けて移住希望者の住まいに関する相談をお受けしている、公益社団法人全日本不動産協会山口県本部 住まいのコンシェルジュの藤野です。山口県移住支援サイト

山口県内の13市6町それぞれの移住への取り組みや町の魅力を、ひとつずつ丁寧にご紹介するこのシリーズ。今回は、山口県北部の日本海に面した、人口およそ2,600人の阿武町にスポットを当てます。

阿武町は山口県最北端に位置し、海と山の自然に恵まれた町です。 山口県人口統計調査

地方移住というと、豊かな自然やゆったりした暮らしが注目されがちです。もちろんそれも大きな魅力ですが、実際に移住を考えるときに気になるのは、毎日の暮らしに直結することではないでしょうか。

住まいはどう探すのか。仕事はあるのか。子育てしやすい環境は整っているのか。病院や買い物、移動手段に不便はないのか。移住は暮らしそのものを変える選択だからこそ、こうした現実的な情報が欠かせません。

今回は、住まい探しに関わってきた立場から、阿武町がどのように移住者を受け入れ、どのような支援や暮らしの環境を整えているのかを、事実に沿ってわかりやすくお伝えします。

阿武町への移住を考えている方はもちろん、山口県で自分らしい暮らし方を探している方にも、参考になる内容です。ぜひ最後までご覧ください。

第1章 三方を萩市に囲まれた町。阿武町ってどんなところ

地図で山口県を見ると、阿武町はとても特徴的な場所にあります。北側は日本海に面し、東、西、南の三方は萩市に接しています。海と山に囲まれた、自然豊かな小さな町です。

阿武町の人口は、直近の公表値では2,600人台です。海沿いには漁港があり、少し内陸に入るとのどかな田園風景や山林が広がっています。大きな町ではありませんが、その分、地域の距離感が近く、落ち着いた暮らしを感じやすい環境です。

惣郷鉄橋

           惣郷鉄橋

では、なぜ阿武町は萩市に囲まれながらも、独立した町として歩んできたのでしょうか。実は、この地理的な特徴や自治体としての歩みの中にこそ、阿武町らしい地域づくりや移住への取り組みを読み解く手がかりがあります。全国から注目される理由も、 こうした町の姿勢と深く関わっています。

第2章 なぜ平成の大合併で単独町政を選んだのか

2005年頃、全国では平成の大合併と呼ばれる市町村再編が進み、山口県内でも多くの町や村が近隣市との合併を選びました。そうした中で阿武町は、最終的に合併ではなく、単独町政の道を選びました。これは町の歴史の中でも大きな転機だったといえます。

当時は、周辺自治体との協議が進む一方で、これからの地域づくりや自治のあり方について、町の中でさまざまな議論が重ねられました。そして阿武町は、自分たちの町の将来を自分たちで考え、運営していく道を選びました。

その背景のひとつとして挙げられるのが、地域の産業や暮らしを支える基盤が町の中にあったことです。なかでも道の駅阿武町は、全国でも早い時期に整備された道の駅で、発祥の地のひとつとして知られています。地元の農産物や水産物の販売拠点として、阿武町らしい地域経済を支える役割を果たしてきました。

道の駅阿武町

また、阿武町ではその後、移住や定住に向けた取り組みも積み重ねてきました。空き家バンクの活用もそのひとつで、今も住まいの確保を支える仕組みとして運用されています。こうした取り組みの背景には、単独町政を選んだ阿武町の歩みがあるといえます。 阿武町空き家バンク

第3章 移住者が気になる住まいとお金の支援

ここからは、阿武町での暮らしを始めるときに気になる、住まいと費用の支援制度をご紹介します。

移住を考えるとき、「どんな家に住めるのか」「引っ越しや住まいの準備に、どのくらいお金がかかるのか」は大きな関心事です。阿武町では、空き家バンクをはじめ、住宅の取得や改修、家賃などを支える制度が用意されています。

家賃の負担を抑えて暮らしを始める

まず、いきなり家を購入するのではなく、賃貸住宅から暮らしを始めたい方に向けた制度があります。

新たに阿武町へUターン・Iターンする世帯が町内の賃貸住宅に入居した場合、家賃の2分の1が2年間補助されます。補助額は月額2万円が上限です。

移住後の生活を実際に体験しながら、地域の環境や仕事、通勤のしやすさなどを確かめられる点は、賃貸で暮らし始める大きなメリットです。阿武町役場 定住奨励金のご案内

空き家バンクの住宅を自分らしく整える

阿武町では、空き家の売却や賃貸を希望する所有者と、移住・定住を希望する方をつなぐ「空き家バンク」を運用しています。

空き家バンクに登録された住宅を取得し、町内の建築業者に依頼してリフォームする場合は、対象経費の2分の1、最大100万円の補助を受けられます。なお、対象となる工事費などの条件があるため、利用を検討する際は事前の確認が必要です。

古い家の雰囲気を残しながら、水回りや内装を自分たちの暮らしに合わせて整えたい方にとって、心強い制度といえるでしょう。阿武町 空き家バンク活用

住宅を取得する場合の支援も

住宅を購入する場合には、住宅取得補助金もあります。対象経費の10分の1が補助され、新築住宅は上限150万円、中古住宅は上限30万円と案内されています。

ただし、対象者や住宅の条件、申請時期などが定められているため、購入前に制度の詳細を確認しておくことが大切です。移住応援ガイドブック

結婚を機に阿武町で暮らす方へ

結婚を機に阿武町で新生活を始める世帯には、「結婚新生活支援補助金」もあります。

夫婦ともに39歳以下で、前年の世帯所得が500万円未満の場合、住宅の取得費や家賃、引っ越し費用、住宅のリフォーム費用などが補助対象となります。補助額は30万円が上限で、夫婦ともに29歳以下の場合は上限60万円です。

また、町内で暮らし続ける意思のある方が結婚した場合には、町内で利用できるデジタル地域通貨「あぶPAY」による結婚祝金も案内されています。新生活のスタートを支えるだけでなく、町内のお店の利用を通じて地域の活性化にもつながる仕組みです。

阿武町の支援制度は、住宅を購入する場合だけでなく、賃貸から始めたい方や、空き家を改修して暮らしたい方にも対応しています。移住後の生活スタイルに合わせて選択肢を検討できることが、阿武町の住まい支援の魅力です。

なお、制度の内容や申請条件は変更される場合があります。実際に利用する際は、申請前に阿武町の最新情報をご確認ください。

第4章:仕事の不安をやわらげる阿武町の取り組み

移住を考えるとき、住まいと並んで気になるのが仕事です。阿武町では、農業や地域の仕事にふれながら暮らしとの相性を確かめられる取り組みがあります。

そのひとつが、阿武町独自の1/4worksです。これは、農業の繁忙期など、人手が必要な時期に合わせて仕事をつなぐ取り組みで、町では少し変わったハローワークのような機能づくりとして紹介しています。いきなり移住を決めるのではなく、まずは地域で働きながら暮らしを体験してみたい方にとって、阿武町を知るきっかけのひとつになっています。 しごとラボ

実際に阿武町では、お試し住宅を利用しながら田舎暮らしを体験できる仕組みも用意されています。利用料は1人1日500円が基本で、水道光熱費込みです。滞在しながら地域の仕事や暮らしにふれられるため、移住後の生活を具体的にイメージしやすくなります。 阿武町 お試し住宅

さらに、本格的に農業を始めたい方に向けた支援もあります。阿武町では、新たに農業を志す方に対して、最大2年間、月額15万円を助成する制度を案内しています。就業初期の不安をやわらげ、暮らしと仕事の基盤を整えるための後押しといえます。

阿武町の仕事に関する支援は、いきなり定住や独立を求めるのではなく、まずは地域で働いてみることから始められる点が特徴です。移住を考える人にとって、住まいだけでなく働き方まで段階的に試せるのは、心強いポイントではないでしょうか。

第5章:子育て世代が気になる、教育と学校の環境

お子さんを連れての移住を考えるとき、学校や教育環境が気になる方は多いのではないでしょうか。阿武町では、小さな町ならではの距離の近さを生かしながら、子どもたちの学びを支える取り組みが進められています。

阿武町では、小中一貫教育校阿武学園のもとで、子どもの成長を見通した学びの環境づくりが進められています。少人数ならではのきめ細かな関わりに加え、地域とのつながりを大切にした学びも特徴のひとつです。 あぶ広報

また、学校だけでなく、地域と連携しながら子どもを育てる仕組みとして、コミュニティ・スクールや地域協育ネットにも取り組んでいます。学校、家庭、地域が関わり合いながら、子どもの学びや成長を支えている点は、阿武町の教育環境の魅力といえそうです。 子ども・子育て支援

さらに、阿武町では町が主体となって運営する公設塾あぶスタの取り組みも始まっています。学校の授業に加えて学べる場を整えようとしていることからも、学力向上への力の入れようがうかがえます。

子どもたちの心の面では、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携する体制も取られています。学力だけでなく、安心して学校生活を送れる環境づくりにも目が向けられています。

第6章 町を支える道の駅と無角和種の魅力

阿武町の暮らしや地域のにぎわいを語るうえで、道の駅阿武町は欠かせない存在です。物産直売所や温浴施設に加え、隣接地にはABU CAMPFIELDも整備され、観光や交流の拠点として広がりを見せています。敷地内には日本海温泉 鹿島の湯があり、日本海を眺めながらゆったり過ごせるのも魅力です。

ABU CAMPFIELDは2022年3月12日にオープンし、阿武町の発信では、オープンから1年で1万2千人近い来場があったと紹介されています。キャンプとあわせて道の駅や温泉を利用する人も多く、町の魅力に触れる入口のひとつになっています。

ABUキャンプフィールド

また、阿武町を語るうえで外せないのが、希少な和牛として知られる無角和種です。阿武町関連の案内では、無角和種は全国で約200頭とされ、その約7割に当たる約140頭が阿武町で飼育されていると紹介されています。阿武町ならではの食や風景を支える存在として、大切に受け継がれています。

無角和牛_放牧

阿武町では、こうした地域資源を、ただ特産品として売るだけでなく、体験や交流にもつなげようとしています。無角和種の見学や味わいを組み合わせた体験プログラムもあり、町の自然や産業にふれながら、その魅力を知るきっかけになっています。

第7章 小さな町がこれからも暮らしを支えるための形

ここまで、阿武町の独自の取り組みをご紹介してきました。移住や定住に向けた支援を重ねてきた結果、町の魅力を知り、実際に暮らしを選ぶ人が少しずつ増えてきています。

一方で、阿武町は人口減少や少子高齢化という現実にも正面から向き合っています。小さな町だからこそ、町らしさを大切にしながら、暮らしに必要な機能をどう支えていくかが大きな課題です。

そこで阿武町が進めているのが、萩市との定住自立圏による連携です。萩市と阿武町は、地理的にも経済的にもつながりの深い地域として、互いに協力しながら、圏域全体で安心して暮らせる地域づくりを目指しています。

阿武町らしい地域づくりや移住支援は町として取り組みながら、広い範囲で支え合ったほうがよい分野については、近隣と連携していく。そうした考え方は、これからの地方の暮らしを支える現実的な方法のひとつといえそうです。萩市と阿武町の定住自立圏は、まさにその実践例として進められています。

まとめ 阿武町から見えてくる暮らしのかたち

ここまで、阿武町の移住支援や地域の取り組み、そして暮らしの魅力について見てきました。

阿武町は、決して大きな町ではありません。ですが、小さな町だからこそ、住まいのこと、仕事のこと、子育てのことに丁寧に向き合いながら、その町に合った形で工夫を重ねてきたことが伝わってきます。

空き家バンクを活用した住まい探し、地域の仕事にふれられる仕組み、子どもたちの学びを支える環境づくり、そして道の駅や無角和種を生かした魅力発信。こうした取り組みの一つひとつに、阿武町での暮らしを少しでも安心して始めてもらいたいという思いが感じられます。

また、町の良さを大切にしながら、必要なところでは萩市と連携していく姿にも、これからの地域のあり方を考えるヒントがあるように思います。すべてを町だけで担おうとするのではなく、自分たちで大切にするものと、周囲と連携しながら支えるものを見極めている。その姿勢にも、阿武町らしさが感じられます。

もし、自然の近くで、自分たちらしい暮らしをゆっくり育てていきたいと考えている方がいれば、阿武町はきっと一度知ってみる価値のある町です。この記事が、これからの住まいや暮らし方を考えるきっかけになればうれしく思います。

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