「空き家を更地にして売る」は本当に正解? 地方の不動産売却で後悔しないための注意点
先日、ある不動産流通の専門誌で「知人の空き家売却を通して家族の連携の大切さを感じた」という記事を目にしました。その中には、「高く売るには更地にする方が良いと不動産会社に言われた」「最終的には不動産会社にまとめて買い取ってもらった」といった内容が記されていました。
しかし、この内容をそのまま信じてしまうのは少し危険かもしれません。特に私たちが暮らす地域のような地方の不動産においては、「更地=高く売れる」という図式が必ずしも当てはまらないからです。
「更地にしたほうが良い」という言葉の裏側
「建物を壊して更地にしたほうが、買い手が見つかりやすいですよ」 不動産会社からそう提案されることは少なくありません。確かに、都会の需要が高い土地であれば、更地の方がすぐに建築に取り掛かれるため喜ばれるケースもあります。しかし、地方では事情が異なります。
更地にする前に、まずは以下の大きなリスクを知っておく必要があります。
1. 固定資産税が跳ね上がるリスク
住宅が建っている土地には「住宅用地の軽減措置」が適用されており、固定資産税が最大で6分の1に減額されています。建物を壊してしまうと、この優遇がなくなります。つまり、売れない期間が長引くと、従来の数倍の税金を払い続けることになるのです。
2. 高額な解体費用の持ち出しと「売れ残り」の現実
一般的な住宅の解体には、数百万円の費用がかかります。「高く売れるから」と言われて解体したものの、地方の現実として、解体費用を上回る価格で土地が売れるとは限りません。それどころか、更地にしたがためにかえって売却が難しくなり、解体費用すらまかなえない値段で売りに出しても、長期間売れ残ってしまうケースが実際にあります。
自分ならそこに家を建てるか?という視点
インターネットで少し調べるだけで、その地域の10年後、20年後の未来はある程度予測できます。
人口の推移、都市計画、交通アクセス、病院などの行政サービス、スーパーなど商業施設の状況といったデータは、今や誰でも簡単に検索できるからです。
もし不動産会社から更地にするよう勧められたら、一度立ち止まって、ご自身にこう問いかけてみてください。
「更地になったとして、この土地に、この価格で、自分自身が新しく家を建てようと思うだろうか?」
この問いに対する答えが「NO」であれば、更地にして高く売ろうとする作戦は見直したほうが良いかもしれません。
建物があるからこそ売れることもある
最近では、古民家を自分たちで直しながら住みたいという方や、あえて古い建物を安く買ってリノベーションしたいという若い世代の需要も増えています。「建物があるから売れない」と思い込みがちですが、実は建物が残っていた方が売却しやすい地域もあるのです。
国税庁:固定資産税の住宅用地の特例
「まとめて買い取り」は誰にとってお得なのか?
件の記事には、「提示価格は高くなかったが、まとめて買い取ってもらえるので決めた」とありました。
これこそが、皆さんに最も慎重になっていただきたいポイントです。
不動産会社による「買い取り」は、確かに手間もかからず、すぐに現金化できるというメリットがあります。しかし、この場合は一般的な流通価格で売却できる価格の6割から7割程度になるのが一般的な傾向です。
もし「更地にしたほうがいい」と勧められて建物を壊し、そのあとに「売れないからうちで買い取りますよ」と安値を提示されたらどうでしょう。売主様は解体費用の負担に加えて、税金の不安、そして安値での売却という三重苦を背負うことになります。
最後に
不動産の売却は、多くの人にとって一生に一度の大きな決断です。雑誌の記事や一般的なマニュアルに書かれていることが、ご自身の土地に最適だとは限りません。
後になって「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために。
まずは「急がせない」「誠実にデメリットも説明してくれる」相談相手を見つけ、ご自身の納得感を大切にしてください。地域の空き家が、誰かの新しい暮らしの場としてバトンタッチされるよう、常に公平な視点での情報発信を続けてまいります。





