私は現在、山口県からの業務委託で『住まいのコンシェルジュ』を務めており、県外から移住をご検討中の方々のご相談を承っております。
不動産の仕事に携わって38年。これまで数多くの方の「住まい」に関するご相談に乗ってきました。近年、リモートワークの普及やライフスタイルの変化により、都会から地方への移住を考える方が増えています。その中で、私たちの住む山口県に興味を持ってくださる方がいるのは、本当に嬉しいことです。
この記事では、移住先の候補として山口県を検討し始めたばかりの方に向けて、山口県がどのような場所なのか、どんな魅力があるのか、そして実際に住まいを探す際にどんな点に気をつければよいのかを、日々の業務を通じて感じる「リアルな視点」からわかりやすくお話しします。
1. なぜ今、山口県への移住なのか?
山口県と聞いて、皆さんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。「ふぐが有名」「秋吉台がある」「本州の端っこ」といった印象があるかもしれません。観光地としての魅力もたくさんありますが、「暮らす場所」として見たとき、山口県にはとてもバランスの取れた良さがあります。
都会のようなせわしなさがなく、かといって不便すぎて生活に困るような場所でもない。海があり、山があり、スーパーや病院などの生活基盤もしっかり整っている。ひとことで言えば、「背伸びをせずに、自分たちのペースで心豊かに暮らせる場所」です。
災害が比較的少ない安心感
長く住む家を考えるとき、誰もが気になるのが自然災害のリスクです。日本はどこにいても地震や台風のリスクがありますが、山口県は全国的に見て地震の発生回数が比較的少ない地域として知られています。
もちろん「絶対に安全」という場所はありません。近年は全国的に大雨による被害も増えており、住む場所を決める前には必ずハザードマップ(災害予測図)を確認することが大切です。それでも、年間を通じて気候が穏やかで、大きな災害の歴史が他県と比べて少ないことは、日々の暮らしに大きな安心感を与えてくれます。
ゆとりのある住環境
都会では、庭付きの広い一戸建てに住むのはなかなかハードルが高いものです。しかし山口県であれば、土地の価格が都会に比べてかなり抑えられているため、同じ予算でも驚くほどゆとりのある住まいを手に入れることができます。
車を2〜3台停められる駐車場、子どもが走り回れる庭、週末に家庭菜園を楽しむスペース。そうした「都会では諦めていた暮らし」を現実のものにできるのが、地方移住の最大のメリットの一つです。
2. 山口県は3つのエリアで顔が違う
山口県は三方を海に囲まれており、住む場所によって気候や風土、暮らしの雰囲気が大きく変わります。ご自身の理想とするライフスタイルに合わせて、どのエリアが合いそうか想像してみてください。
瀬戸内海側(岩国・柳井・田布施・下松・周南など)
私が普段活動している田布施町を含む瀬戸内海側は、年間を通じて雨が少なく、とても温暖な気候です。波の穏やかな瀬戸内海を眺めながら、のんびりとした時間を過ごすことができます。 また、周南市や下松市などは商業施設や病院も充実しており、買い物や子育て環境の利便性が高いため、「地方移住はしたいけれど、いきなり山奥は不安」という方にとても人気があります。岩国市であれば、広島県へのアクセスも良く、新幹線や飛行機(岩国錦帯橋空港)も使えるため、県外への移動が多い方にも便利です。
日本海側(萩・長門など)
美しい海と豊かな自然、そして歴史ある街並みが好きな方には日本海側がおすすめです。夏は透明度の高い海でレジャーを楽しみ、冬は新鮮な海の幸を堪能できます。 瀬戸内海側に比べると冬は冷え込みやすく、雪が積もることもありますが、四季の移ろいを肌で感じられる素晴らしい環境です。農業や漁業など、自然と深く関わる暮らしをしてみたいという方に選ばれることが多いエリアです。
内陸部(山口・防府など)
県庁所在地である山口市や防府市は、歴史と文化が息づく落ち着いた街です。盆地になっているため、夏は少し暑く冬は冷え込むという特徴がありますが、緑豊かな山々に囲まれた静かな環境が魅力です。高速道路のインターチェンジや新幹線の駅(新山口駅)があり、県内どこへ行くにもアクセスの中心となる便利な場所でもあります。
3. 失敗しない「移住の住まい選び」の基本
ここからは、実際に山口県で住まいを探す際のポイントをお話しします。長年、不動産の取引を見てきた立場から、後悔しないための大切なステップをお伝えします。
最初は「賃貸」から始めるのがおすすめ
移住相談に来られる方の中には、「せっかく移住するのだから、いきなり古民家を買ってリノベーションしたい」と意気込む方も多くいらっしゃいます。その夢はとても素晴らしいのですが、知らない土地でいきなり家を買うのは少しリスクが伴います。
まずは気になるエリアでアパートや貸家に数ヶ月〜1年ほど住んでみることをお勧めします。実際に暮らしてみると、「夏は草刈りが大変」「車がないと買い物が不便」「ご近所付き合いの距離感」など、旅行で訪れただけでは分からないリアルな生活が見えてきます。土地の空気感に慣れ、地域の人との関わりができてから、腰を据えて家を買う(または建てる)ほうが、失敗は格段に少なくなります。
「空き家バンク」の現実と賢い使い方
地方移住といえば「空き家バンク」を思い浮かべる方も多いでしょう。各市町が運営しており、格安で一戸建てを手に入れられる可能性がある魅力的な制度です。
ただし、注意点もあります。空き家バンクに登録されている物件は、長年人が住んでいなかったケースも多く、水回り(お風呂やトイレ)の改修や、屋根の修繕などに数百万円単位のリフォーム費用がかかることが珍しくありません。「物件価格は安かったけれど、直すのに新築と同じくらいお金がかかってしまった」ということもあり得ます。
空き家を検討する際は、物件の価格だけでなく「住める状態にするまでに、あといくらかかるのか」をしっかりと見積もることが重要です。私たちのような地元の業者や、建築の知識がある人に一緒に見てもらうと安心です。
車の運転は必須と考えておく
山口県での暮らしにおいて、車は「生活の足」として欠かせません。都会のように、歩いて数分の場所にコンビニがあり、数分おきに電車が来るという環境は限られています。通勤、買い物、病院への通院など、基本的には車移動が中心になります。 ご夫婦で移住される場合は、最終的に車が2台必要になるご家庭がほとんどです。住まいを探す際は、駐車スペースが十分に確保できるか、前の道路の幅は運転しやすいか、といった点も忘れずにチェックしてください。
4. 知っておきたい手厚い支援制度
山口県や各市町では、移住される方へのサポートにとても力を入れています。こうした制度を上手に活用することで、移住にかかる経済的な負担を大きく減らすことができます。
・空き家改修の補助金 空き家バンクを通じて購入した物件をリフォームする際、その費用の一部を自治体が補助してくれる制度があります。水回りのリフォームなどに利用できることが多く、大変助かる制度です。
・移住支援金 東京圏などから移住してきて、県内で就業・起業する方に対して、支援金が支給される制度があります。(※条件が細かく設定されているため、ご自身のケースが当てはまるか、事前に各窓口に確認が必要です)
・子育て支援 医療費の助成や、給食費の補助など、自治体ごとに独自の子育て支援策を行っています。子育て世代の方にとっては、毎月の家計に直結する大切なポイントですので、住みたい町がどんな支援を行っているか、ぜひ比較してみてください。
これらの補助金や制度は、年度によって内容が変わったり、予算の上限に達すると受付が終了したりすることがあります。行動を起こす前に、まずは県の移住相談窓口や、気になる市町の役場へ問い合わせて、最新の情報を手に入れるようにしてください。
山口県移住支援ポータルサイト「住んでみいね!ぶちええ山口」
5. 移住を成功に導くための3つのステップ
最後に、移住の計画をスムーズに進めるための手順をまとめます。
なぜ移住したいのか。「自然の中で子育てがしたい」「家庭菜園を楽しみたい」「海釣りを毎日したい」など、一番叶えたい目的を明確にしましょう。目的がはっきりしていれば、海側が良いのか、山側が良いのか、ある程度便利な街中が良いのか、エリアの絞り込みがしやすくなります。
インターネットの画像や動画だけでは分からない「におい」「風の心地よさ」「スーパーの品揃え」「夜の暗さ」があります。気になる地域があれば、まずは旅行感覚で訪れてみてください。自治体によっては、数日間から数週間滞在できる「お試し暮らし住宅」を用意しているところもあります。ぜひこうした施設を利用して、実際の暮らしを体験してみることをお勧めします。
おわりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。 見知らぬ土地への移住は、人生におけるとても大きな決断です。期待と同じくらい、不安な気持ちがあるのも当然のことです。
私はこれまで38年間、この山口県の地で数え切れないほどの「住まい」と「人」との出会いを見てきました。家を探すということは、単なる箱を探すことではなく、これからの「暮らし方」や「生き方」そのものを見つける作業だと思っています。
山口県には、肩の力を抜いて、自然体で暮らせる素晴らしい環境があります。もし、この記事を読んで少しでも山口県での暮らしに魅力を感じていただけたなら、ぜひ一度、この地に足を運んでみてください。穏やかな海や、緑豊かな景色が、皆さんを優しく迎えてくれるはずです。
ご自身の理想の暮らしが実現できる場所として、山口県を候補の一つに加えていただければ、これほど嬉しいことはありません。あなたの新しい挑戦を、心から応援しています。
