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買ってからでは遅い?都市計画道路とは何か、立ち退きリスクと建築制限をわかりやすく解説

都市計画道路とは

理想の土地を見つけた!でも「都市計画道路」って何?

「駅から近くて、広さも十分。しかも周辺の相場より少し安い。ついに理想の土地を見つけた!」 マイホーム探しをしているとき、そんな運命的な出会いを果たすことがあります。しかし、不動産会社から渡された資料の隅に、見慣れない言葉が小さく書かれていることに気づくかもしれません。

それが「都市計画道路に指定されています」という一文です。

日常の生活ではあまり耳にしない言葉ですが、家や土地を買う上では、絶対に知っておかなければならない非常に重要なキーワードです。簡単に言えば、「将来、ここには新しい道路を造る予定がありますよ」と行政が前もって決めている場所のことです。

「えっ、せっかく家を建てても、将来道路になってしまうの?立ち退きになるの?」と不安に思うのは当然のことです。一生に一度の大きな買い物であるマイホームが、自分たちの意思とは無関係に取り壊されるかもしれないという事実は、非常に切実な問題です。

しかし、過度に恐れる必要はありません。都市計画道路には明確なルールがあり、現状がどの段階にあるのかを正しく理解すれば、リスクをコントロールすることは十分に可能です。場合によっては、その性質を逆手にとって、お得にマイホームを手に入れる選択をする人もいます。

このブログでは、難しい法律用語をできるだけ使わず、私たちが普段使っている言葉で「都市計画道路とは一体何なのか」「自分の土地が該当したらどうなるのか」「買うべきか避けるべきか」について、徹底的に解説していきます。

なぜ「未来の道路」を前もって決めておくのか

そもそも、なぜ何十年も先の道路の計画をわざわざ決めて、個人の土地に制限をかけるのでしょうか。

街づくりというのは、一朝一夕にはいきません。人口が増えたり、新しい商業施設ができたりすると、交通量が増えて渋滞が起きたり、災害時に消防車や救急車が通れなくなったりする危険があります。そのため、市町村や都道府県は「将来、この街が発展していくためには、ここからここまでを繋ぐ大きな道路が必要になるだろう」という青写真をあらかじめ描いておきます。

もし、何の計画もなしに皆が自由に大きなビルやマンションを建ててしまったらどうなるでしょうか。いざ「道路を造ろう」となったとき、頑丈なコンクリートのビルをいくつも壊して回らなければならず、膨大な時間と税金がかかってしまいます。

それを防ぐために、「ここには将来道路を通す予定だから、すぐに壊せるような建物しか建てないでくださいね」という網をかけておくのです。これが都市計画道路の根本的な目的です。

実は、この計画の多くは昭和の高度経済成長期など、かなり昔に作られたものです。「計画されたのは50年前だけど、未だに道路を造る気配がまったくない」という場所は日本全国に無数に存在します。だからこそ、「計画がある=すぐに家を追い出される」というわけではないのが、この問題の少し複雑なところです。

国土交通省 都市計画道路の見直し

計画の「進み具合」で運命が大きく変わる

都市計画道路を理解する上で一番大切なのは、「その計画が今、どの段階にあるのか」を知ることです。大きく分けて2つの段階があり、どちらの段階にあるかで、そこに住む人の運命は天と地ほど変わります。

1. 「都市計画決定」の段階(まだ予定の段階)

街の資料に「ここに道路を通す予定です」と線が引かれただけの状態です。日本にある都市計画道路の多くは、現在この段階で止まっています。

この段階では、いつ道路工事が始まるのか、そもそも本当に道路ができるのかどうかも分かりません。予算が足りなかったり、周辺の環境が変わって道路の必要性がなくなったりして、何十年も放置されていることも珍しくありません。最近では、人口減少に伴って計画自体が白紙(廃止)になるケースも増えてきました。

そのため、この段階の土地であれば、家を建てて普通に住むことができます。ただし、「いざという時は立ち退いてもらうので、壊しやすい家にしてね」というルール(建築制限)が課せられます。

2. 「事業認可」の段階(いよいよ工事が始まる段階)

単なる予定から一歩進んで、「予算も確保して、いよいよ本格的に道路造りをスタートします」と国や県から正式にお墨付きをもらった状態です。

この段階になると、事態は一気に現実味を帯びます。行政の担当者が実際に土地の所有者のところへやってきて、土地を買い取るための交渉や、立ち退きの話し合いが始まります。

事業認可が下りた土地に、これから新しく家を建てることは原則としてできません。「これから道路にするために土地を空けてもらう場所」に、わざわざ新しい建物を造ることは認められないからです。もし、購入を検討している土地がすでに「事業認可」の段階に入っていたら、そこに長く住み続けることは不可能だと考えてください。

もし該当したら?家を建てる時のルール(建築制限

では、まだ予定の段階である「都市計画決定」の土地を買って家を建てる場合、どのような制限がかかるのでしょうか。 法律(都市計画法)では、将来の立ち退き作業をスムーズに行うために、建物の構造や規模に一定のルールを設けています。市役所などに申請をして「建ててもいいですよ」という許可をもらう必要があります。

具体的なルールは、一般的に以下のようになります。(自治体によって少しルールを緩くしている場合もあります)

建物の階数は「2階建て」まで

原則として、3階建てや4階建ての大きな家を建てることはできません。地上2階建て以下であることが条件になります。ただし、最近では自治体によっては条件付きで3階建てを認めている地域も増えてきました。それでも、階数に制限があることには変わりありません。

「地下室」は作れない

地下に部屋を作ったり、深い基礎を打ち込んだりすることは禁止されています。道路を造る際に、地下のコンクリートを掘り起こすのは非常に大掛かりな工事になり、時間も費用もかかってしまうからです。

建物の素材は「木造」か「鉄骨造」

これが最も重要なポイントです。鉄筋コンクリート造(RC造)のような、非常に頑丈で壊しにくい素材で家を建てることはできません。将来取り壊すことが前提となっているため、解体が比較的容易な木造や、軽量鉄骨造などの素材に限定されます。

つまり、「どうしても3階建ての家がいい」「頑丈な鉄筋コンクリートの家で地下にシアタールームを作りたい」という夢を持っている方にとっては、都市計画道路にかかっている土地は、その願いを叶えることができない場所ということになります。逆に言えば、「一般的な木造の2階建てで十分」という方にとっては、この建築制限自体はそれほど大きなデメリットには感じないかもしれません。

敷地の「全部」がかかるか、「一部」がかかるかの違い

都市計画道路の線は、必ずしも土地の形に沿って綺麗に引かれているわけではありません。容赦なく敷地の真ん中を斜めに横切っていることもあります。そのため、自分の土地が「どのように」計画線にかかっているかを確認することが非常に大切です。

敷地のすべてが道路になる場合

将来道路ができるとき、今の家を取り壊して完全に立ち退かなければなりません。その代わり、土地の代金や引っ越し費用などは、行政から補償金として支払われます(補償については後ほど詳しくお話しします)。

敷地の一部だけが道路になる場合

例えば、庭先の部分だけが道路の計画にかかっているようなケースです。この場合、道路ができるときに家本体を壊す必要がないのであれば、そのまま住み続けることができます。道路にかかっている庭の部分だけを行政に買い取ってもらう形になります。

しかし、注意が必要なのは「残った土地で今まで通りの生活ができるか」という点です。庭がなくなるだけで済めば良いですが、駐車場がなくなってしまったり、道路が家の目の前ギリギリまで迫ってきて騒音や振動がひどくなったりする可能性があります。また、残った土地の形がいびつになってしまい、将来その土地を売ろうとしたときに、買い手がなかなか見つからないというリスクも抱えることになります。

敷地の一部だけがかかっている場合は、家を建てる際に「計画線の外側(将来道路にならない部分)」に建物を配置すれば、鉄筋コンクリート造などの頑丈な家を建てることも可能です。計画線にかかっている部分だけを庭や駐車場にしておく、という工夫をしてリスクを避けるケースはよく見られます。

いざ道路ができる時「立ち退き」と「補償金」の現実

何十年も動きがなかった計画が急に動き出し、「いよいよ道路を造るので立ち退いてください」と言われる日が来るかもしれません。その時、私たちの生活やお金はどうなるのでしょうか。

よく誤解されがちなのですが、ある日突然ブルドーザーがやってきて、無理やり家を壊されて放り出される、ということはありません。行政の担当者が何度も足を運び、誠実に話し合いが行われます。

そして、立ち退きに際しては、しっかりとした「補償金」が支払われます。この補償金は、皆さんが損をしないように、かなり細かく計算されます。

補償の対象となる主なもの
1. 土地の代金
   道路になる部分の土地を、その時の適正な価格(周辺の相場など)で買い取ってくれます。
2. 建物の補償
  今ある家を取り壊し、同じような家を別の場所に建てるために必要なお金を補償してくれます。
  長く住んで古くなった家であっても、「今、同じものを建て直したらいくらになるか」を基準に
  計算されるため、まとまった金額になることが多いです。
3. 引っ越し費用
  新しい家へ引っ越すための費用や、仮住まいが必要な場合の家賃なども支払われます。
4. その他の費用
  お子さんがいる場合は、転校に伴う制服代などの細かな出費も考慮されることがあります。
  また、お店を経営している場合は、休業中の利益の補償なども含まれます。
金銭的な面だけを見れば、「古くなった家を新築に建て替える費用がもらえるなんてラッキー」
と考える人もいるかもしれません。実際、補償金をもらって喜んで引っ越していく方もいらっしゃいます。
しかし、お金では解決できない問題もたくさんあります。
住み慣れた街を離れなければならない寂しさ、ご近所付き合いがゼロからになる不安、新しい土地を探し、間取りを考え、引っ越し作業をするという膨大な時間と労力。これらは想像以上に心身の負担となります。特にご高齢になってからの立ち退きや引っ越しは、大きなストレスになるでしょう。
「お金さえもらえればそれでいい」とは簡単に割り切れないのが、立ち退きの現実です。

金銭的なメリットはある?固定資産税と購入価格

ここまで聞くと、「都市計画道路にかかっている土地なんて、リスクばかりで絶対に買わないほうがいい」と思うかもしれません。しかし、世の中にはあえてそのような土地を選ぶ人もいます。なぜなら、確かなメリットも存在するからです。

1. 周辺の相場よりも安く買えることが多い

やはり将来の立ち退きリスクや建築制限がある分、一般の土地に比べて価格が安く設定されていることがほとんどです。周辺の相場よりも1割から2割ほど安く買えることもあり、「同じ予算でも、より広い土地が買える」「より駅から近い場所に住める」という点は大きな魅力です。

2. 税金が安くなる特例がある

土地や家を持っていると、毎年「固定資産税」と「都市計画税」という税金を払わなければなりません。しかし、都市計画道路にかかっている土地の場合、この税金が安くなる優遇措置(減免)を受けられることがあります。

家は建てた後も長くお金がかかるものです。購入価格が安く抑えられ、さらに毎年の税金も安くなるのであれば、トータルでの住居費を大きく節約することができます。

結局のところ、買うべきか、避けるべきか?

都市計画道路にかかっている物件を買うべきかどうか。その答えは、「皆さんがその家でどのような将来を思い描いているか」によって完全に分かれます。
こんな方には向いているかもしれません
・ 「どうしてもこのエリアに住みたいけれど、予算が足りない」という方。相場より安く買えるメリット
  を最大限に活かせます。
・ 「子どもが独立するまでの20年〜30年住めればそれでいい」と割り切れる方。将来立ち退きになって
  も、住み替えのタイミングだと前向きに捉えることができます。
・ 最初から「木造の2階建て」を建てる予定だった方。建築制限が全く苦になりません。
こんな方は避けたほうが無難です
・ 「この土地に終の棲家を建てて、代々子どもや孫に引き継いでいきたい」と考えている方。
  いつか道路になって消えてしまうリスクがある土地は不向きです。
・ 「鉄筋コンクリートのスタイリッシュな家を建てたい」「3階建ての広い家がいい」というこだわりの
  ある方。ルール上、建てることができません。
・ 「将来立ち退きになるかも…」という不安を抱えながら生活したくない、というストレスに敏感な方。
安さという魅力的なメリットの裏には、立ち退きや建築制限というはっきりとしたリスクがあります。
自分たちのライフスタイルや人生設計と照らし合わせて、そのリスクを許容できるかどうかを家族でじっくり話し合うことが大切です。

自分で調べる方法と、重要事項説明の聞き方

もし気になる土地を見つけたら、ただ不動産会社の言葉を待つだけでなく、自分自身で調べてみることをお勧めします。今は非常に便利な時代になりました。

一番手軽なのは、インターネットで調べる方法です。「〇〇市 都市計画図」や「〇〇市 GISマップ」と検索してみてください。多くの自治体が、地図上で都市計画道路の線を確認できるシステムを公開しています。気になる土地に色のついた線が被っていないか、簡単にチェックすることができます。

もしインターネットでの見方が分からなければ、その土地がある市役所や町役場の「都市計画課」や「まちづくり課」といった窓口に行ってみましょう。窓口の担当者に「この場所の購入を検討しているのですが、都市計画道路はどうなっていますか?」と住所を伝えれば、親切に教えてくれます。その際、「現在の計画はどの段階ですか?」「直近で道路工事が始まる予定はありますか?」と踏み込んで聞いてみると、より安心です。

そして、最終的に土地や建物を買う契約をする前には、不動産会社から必ず「重要事項説明」というものを受けます。これは、宅地建物取引業法という法律で定められた、非常に大切なルールの説明会です。

この重要事項説明の中で、都市計画道路にかかっている場合は必ず説明が行われます。担当者が分厚い書類を読み上げていきますが、決して聞き流さないでください。 「現在の計画段階は『都市計画決定』なのか『事業認可』なのか」 「建物を建てる際の制限(階数や素材)は具体的にどうなっているのか」 「敷地のどの部分が、どのくらい道路にかかっているのか」 この3点は、ご自身が理解して納得できるまで、何度でも質問して確認してください。ここで遠慮して後から「こんなはずじゃなかった」と後悔することだけは避けていただきたいのです。

最後に:後悔しない住まい選びのために

「都市計画道路」という言葉に出会ったとき、過剰に恐れてせっかくの素晴らしい物件を即座に諦めてしまうのも、逆に「安いから」と安易に飛びついてしまうのも、どちらも得策ではありません。

街がより良く、より安全に発展していくためには、新しい道路は欠かせないものです。その大きな計画の中に、たまたま自分たちが住みたい場所が含まれていた、というだけのことです。

大切なのは、その土地が持つ特別な事情を「正しく知る」ことです。 家が建てられないわけではありません。明日すぐに追い出されるわけでもありません。ルールを守れば快適に暮らすことができますし、万が一の時もしっかりとした補償の仕組みが用意されています。

住まい探しは、自分たちの生き方を見つめ直す作業でもあります。「どんな家に住みたいか」「何年くらいそこに住むつもりか」「将来の生活環境の変化にどう対応していくか」。都市計画道路という条件は、そんなご家族の未来像を話し合うための、ひとつのきっかけになるかもしれません。

目先の価格や間取りだけにとらわれず、見えない計画線が持つ意味をしっかりと紐解いていくこと。それが、何十年先も笑顔で暮らせる、後悔のないマイホーム選びに繋がっていくはずです。どうか、知識という武器を身につけて、ご自身とご家族にとって最良の選択を見つけ出してください。

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