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大阪在住の空き家所有者から聞かれた「災害時井戸登録制度」とは?平生町の井戸は地域の命綱になるのか

さて、今日はみなさんに、ぜひ一緒に考えていただきたい「ある切実なテーマ」についてお話ししたいと思います。

先日、遠く大阪にお住まいの方から、ご相談のご連絡をいただきました。その方は、お隣の平生町に誰も住んでいない「空き家」を所有されているのですが、その敷地内には昔から使われている「井戸」があるそうです。

その方から、こんなご質問を受けました。

「うちの平生町の空き家には井戸があるんですけど、そちらの地域には『災害時井戸登録制度』ってないんですか?」

この言葉を聞いたとき、私は思わずハッとさせられました。なぜなら、遠く離れた大阪で暮らしながらも、ご自身が所有する平生町の空き家を「地域のために役立てられないか」と真剣に考えてくださっていたからです。これは本当に素晴らしい心がけだと感動しました。

しかし、このブログを読んでくださっている方の中には、「そもそも、災害時井戸登録制度って何のこと?」と疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。普段の生活の中では、あまり聞き慣れない言葉ですよね。

そこで今回は、この「災害時井戸登録制度(災害時協力井戸)」とは一体どのようなものなのか、なぜ大阪の方がこの制度を気にかけておられたのか、そして、空き家にある井戸は「厄介なお荷物」ではなく「地域の宝」になり得るのだというお話を、難しい言葉を使わずに、できるだけわかりやすくお伝えしていきたいと思います。

内閣官房水循環政策本部事務局

そもそも「災害時井戸登録制度(災害時協力井戸)」とは?

私たちが毎日当たり前のように使っている水道ですが、地震や台風などの大規模な災害が起きると、水道管が破裂したり浄水場が停電したりして、水がピタリと止まってしまうことがあります。いわゆる「断水」です。

断水したとき、みなさんはまず何を心配するでしょうか。多くの方は「飲み水(飲料水)をどうしよう」と考えるはずです。確かに飲み水は命に関わりますから一番大切です。しかし、実際の災害現場で飲み水と同じくらい、いや、場合によってはそれ以上に深刻な問題となるのが「生活用水」の不足なのです。

生活用水とは、トイレを流すための水、泥だらけになった手を洗う水、顔を洗う水、洗濯をするための水のことです。

たとえば、水洗トイレを1回流すのには、だいたい4リットルから6リットルもの水が必要です。家族4人が1日に数回ずつトイレに行けば、それだけで数十リットルの水があっという間に消えてしまいます。貴重なペットボトルの飲み水を、トイレを流すために使うわけにはいきませんよね。

もし生活用水が足りず、トイレが流せなくなったらどうなるでしょうか。あっという間に衛生状態が悪くなり、ひどい悪臭が発生し、感染症が広がる原因になってしまいます。過去の大きな震災でも、「飲み水は給水車が来てなんとかなったけれど、トイレを流す水がなくて本当に地獄のような思いをした」という声が数え切れないほど上がっています。

ここで大活躍するのが「井戸」です。

災害時井戸登録制度(地域によっては「災害時協力井戸」と呼ばれます)とは、個人や事業所が所有している井戸を、あらかじめ市役所や町役場に登録しておく制度のことです。そして、いざ大規模な災害が起きて水道が止まってしまったときに、ご近所の方々に「生活用水(飲み水以外の水)」として、その井戸水を無償で提供して助け合いましょう、という仕組みなのです。

この制度に登録するためには、いくつか簡単な条件があります。たとえば、「今現在もポンプや手汲みで水が出ること」「極端な濁りや嫌な臭いがなく、生活用水として安全に使える水質であること」「いざという時に、ご近所の方に井戸の場所をお知らせしてもよいと同意できること」などです。もちろん、これはあくまで持ち主の「善意」に基づくボランティアの仕組みですので、無理のない範囲で協力するというものです。

なぜ、大阪にお住まいの所有者さんはこの制度をご存知だったのか?

では、なぜ今回ご相談くださった大阪にお住まいの方は、この制度について詳しくご存知だったのでしょうか。

その背景には、大都市ならではの深刻な防災事情があります。大阪をはじめとする関西エリアや首都圏などの大都市は、人口が密集しているため、もし南海トラフ巨大地震などの大災害が起きて水道が止まれば、数百万人の人々が一斉に「水がない!」というパニックに陥ってしまいます。給水車だけでは到底対応しきれません。

そのため、大阪府や各市町村は、かなり早い段階から「災害時協力井戸」の登録を町を挙げて強く呼びかけてきました。「ご自宅や会社に井戸がある方は、ぜひ地域の命綱として登録してください!」と、ポスターやホームページで日常的に広報活動を行っているのです。

そのような防災意識の非常に高い環境で生活されているからこそ、この所有者さんは「自分の所有する平生町の家にも井戸がある。もし平生町で災害が起きたら、あそこの井戸水をご近所さんに使ってもらって、少しでも恩返しや地域貢献ができないだろうか」と自然に思い至ったのだと思います。

遠方に住んでいると、どうしても空き家のことは「草抜きが面倒だ」「税金ばかりかかる」と後ろ向きに捉えがちですが、この方のように「自分の不動産を地域の安全のために役立てたい」と考える視点は、本当に尊いものだと感じました。

山口県内や周辺地域(田布施町・平生町など)での井戸登録の現状

それでは、私たちが住む山口県や、田布施町、平生町周辺での「井戸登録」の状況はどうなっているのでしょうか。

実は、今年初めに起きた能登半島地震など、近年の度重なる自然災害をきっかけに、全国の自治体でこの制度を見直す動きが急速に広がっています。山口県内でも、萩市や岩国市、周防大島町などで早くから導入されており、お隣の下松市でも最近になって新たな登録制度がスタートしました。

私たちの地元である田布施町でも、町のホームページや広報を通じて「災害時協力井戸」の募集が行われています。

では、今回のご相談の舞台である平生町はどうでしょうか。行政の取り組みは日々更新されていますので、現時点で専用の登録プレートを配るような大規模な制度が町の最前面に出ているかどうかは、役場の担当窓口に直接確認してみるのが最も確実です。

しかし、ここで一番大切なことをお伝えします。

それは、「役場に正式な登録制度があるかどうか」よりも、「いざという時に井戸を使わせてあげようという、持ち主の温かい意思があるかどうか」の方がはるかに重要だということです。

たとえ町に立派な登録制度やステッカーが未整備だったとしても、ご近所の方に「もし地震や台風で断水してトイレの水に困ったら、うちの空き家の井戸水を遠慮なく自由に使ってくださいね」と一言伝えておくだけで、それは立派な「災害時の命綱」として機能します。制度という枠組み以上に、人と人との助け合いの気持ちこそが、最大の防災対策になるのです。

空き家にある「井戸」は厄介者?それとも地域の宝?

私は38年間、数え切れないほどの不動産を見てきました。その中で、空き家の売却や相続の相談を受ける際、庭の隅にある「井戸」が話題になることは非常に多いです。

正直にお話ししますと、少し前までは、井戸に対してマイナスなイメージを持つ方が少なくありませんでした。

「水道があるから井戸なんて使わないし、ポンプが壊れていて邪魔だ」

「古井戸はなんだか気味が悪いし、お祓いをして埋めるのにもお金がかかる」

「子どもが落ちたら危ないから早く無くしてしまいたい」

このように、井戸を「厄介なお荷物」として扱うケースがほとんどだったのです。

しかし、時代は大きく変わりました。

相次ぐ自然災害を経験し、私たちの社会は「電気や水道などの便利なインフラは、実はとても脆い(もろい)ものだ」という現実に気づかされました。その結果、地中深くからくみ上げる井戸水という「独立した水源」の価値が、今、劇的に見直されているのです。

普段の平和な日常でも、井戸水は庭の草木への水やりや、夏の暑い日の打ち水、車の洗車などに気兼ねなく使える「エコで経済的な水」として大活躍します。そして何より、いざという災害時には、地域の衛生状態を保ち、人々の心を落ち着かせるための「命の水」に変わります。

もしあなたの空き家に、今でも水が湧き出る井戸があるのなら、それは決して厄介者などではありません。大切に手入れをすれば、その地域にとってかけがえのない「宝物」になるのです。

遠方から空き家の井戸を管理するための「地に足のついた」コツ

とはいえ、大阪のように遠く離れた場所にお住まいの方が、平生町にある空き家の井戸を良い状態で維持管理していくのは、口で言うほど簡単なことではありません。

井戸というものは、人間の体と同じで「適度に動かしてあげること」が一番のメンテナンスになります。長期間ポンプを動かさないと、機械の中の部品がサビついたり、パッキンが劣化したりして、いざという時に全く水が出なくなってしまいます。また、水を汲み上げずに溜めっぱなしにしておくと、水質が悪くなり、嫌な臭いが発生することもあります。

では、遠方からどのように管理すればよいのでしょうか。ここでは、日常的に取り入れやすい現実的な方法をいくつかお話しします。

1. ご近所さんとの「持ちつ持たれつ」の関係をつくる

一番おすすめなのは、ご近所で親しくしている方に「普段から、お庭の水やりなどにうちの井戸水を自由に使っていいですよ」とお声がけをしておくことです。

ご近所さんが定期的に井戸のポンプを動かして水を使ってくれれば、井戸の水は常に新鮮に保たれ、ポンプの故障も防げます。さらに、ご近所さんが頻繁に空き家の敷地に出入りしてくれることで、「最近、見かけない人がうろうろしていないか」「台風で屋根の瓦が飛んでいないか」など、自然と空き家を見守ってくれるようになります。まさに一石二鳥の防犯・防災対策です。

2. 帰省時の「通水(つうすい)」と「周辺の草刈り」

お盆や年末年始など、年に数回でも空き家に帰ってこられた際には、窓を開けて家の中の空気を入れ替える(換気)のと同じように、必ず井戸のポンプの電源を入れて、しばらくのあいだ水を出しっぱなしにしてください。古い水を押し流し、新しい水を呼び込む「通水」という作業です。

また、井戸の周りに雑草が生い茂っていると、夏場には蚊などの虫が大量に発生する原因になりますし、災害時にご近所さんが水を汲みに来る際に足元が危なくなってしまいます。井戸の周辺だけでも、定期的に草刈りをしてスッキリさせておくことが大切です。

3. 無理な場合は地域のサポートを頼る

「ご近所に頼める人もいないし、遠くてなかなか帰れない」という方もいらっしゃるでしょう。その場合は、無理をして放置するのではなく、地元の草刈り業者や、シルバー人材センター、あるいは私たちのような空き家管理の相談に乗っている地元の人間を頼ってください。少しの費用はかかりますが、ポンプを回して水質を確認したり、建物の風通しを行ったりといった定期的な見守りをお願いすることで、建物の寿命も井戸の寿命も格段に延びます。

地域とのつながりが、あなたの空き家を守ってくれる

私たちの活動エリアである、田布施地区から平生町の海沿いにかけての地域は、昔ながらの温かいご近所付き合いが今も色濃く残っている、とても穏やかな場所です。

しかし、どんなに治安の良い町であっても、誰も手入れをしていない、地域から孤立してしまった空き家というのは、急速に傷んでいきますし、時には心ない人の標的になってしまうこともあります。

だからこそ、今回ご相談いただいた大阪の所有者さんのように、「自分の井戸を災害時にご近所に使ってもらいたい」と地域に向けて心を開く姿勢が、何よりも空き家を守るための最強の盾になるのです。

「いざという時はうちの井戸を使ってね」と声をかけられたご近所さんは、きっと心から感謝するでしょう。そして、「大阪の〇〇さんは、遠くにいるのに私たちのことを気遣ってくれている。〇〇さんの家は、私たちがしっかり見守っておいてあげよう」という気持ちが自然に芽生えるはずです。

機械のセキュリティーシステムも優秀ですが、結局のところ、最後に家を守ってくれるのは「人の目」であり「人の温かい心」です。井戸をきっかけに地域とのつながりを結び直すことは、遠方にお住まいの方にとって、これ以上ない安心感につながると思います。

井戸を生かした空き家の将来(不動産業38年の視点から)

最後に、空き家の将来についてお話しさせてください。

誰も住まなくなった家を、最終的にどうするか。これは本当に頭の痛い問題だと思います。「いつか自分が戻って住むかもしれない」「誰かに貸した方がいいのか」「思い切って売却した方がいいのか」。答えはすぐには出ないかもしれません。

しかし、長年この業界に身を置く者として一つだけ確かなことをお伝えすると、「ただ何もせずに放置して朽ち果てるのを待つこと」だけは避けていただきたいのです。

もし将来、その空き家を手放して売却したり、賃貸に出したりすることになった時、しっかりと手入れされてきれいな水が出る井戸があることは、実は大きなアピールポイントになります。

今の時代、家庭菜園を本格的に楽しみたいという方や、自然に近いエコな暮らしに憧れて移住してくる方、あるいは今回のお話のように「防災に強い家」を探している方など、井戸の価値を高く評価してくれる方は確実に増えています。

「井戸があるから売れない」と嘆くのではなく、「井戸があるからこそ、こんなに豊かで安心な暮らしができますよ」と胸を張って言えるように、今から少しずつでも手入れを続けていくことが、将来の選択肢を大きく広げてくれるのです。

おわりに

今回は、大阪にお住まいの空き家所有者さんからのご質問をきっかけに、「災害時井戸登録制度」について、そして井戸を通じた地域とのつながりについて、かなり深く掘り下げてお話しさせていただきました。

「災害時協力井戸」という行政の仕組みそのものも素晴らしいですが、その根底にあるのは「困った時はお互い様」という、昔ながらの美しい日本の助け合いの精神です。

これからも、遠方にお住まいの所有者さんが抱える不安に寄り添い、地元の方々との温かい関係づくりのお手伝いをしていきたいと心から願っています。

もし、ご自身の所有する空き家のこと、庭の草木のこと、そして今回お話しした井戸のことなど、何か気になることがありましたら、決して一人で抱え込まず、いつでもお気軽にお声がけください。地域の事情をよく知る者として、日常の言葉で、親身になってお話をお聞きします。

最後までこの長い記事をお読みいただき、本当にありがとうございました。

皆さまの日常が、そして大切なご実家や空き家が、いつまでも穏やかで安全でありますように。

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