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事故物件はダメ?それとも掘り出し物?家を手放す方の切実な思いと、買う側の本音と選択

今日お話ししたいのは、少し重たく感じるかもしれませんが、これからの時代、誰にでも身近に起こりうるテーマです。
それは「事故物件」についてです。
テレビやインターネットなどでは、時々お化け屋敷のような扱いで面白おかしく取り上げられることもありますよね。でも、実際にその現場に立ち会い、関わる人たちの声を聞いてきた立場からすると、そこには決して面白半分では語れない、とても人間らしくて、切実な物語がたくさんあるんです。
「事故物件ってやっぱり買わない方がいいの?」 「親が住んでいた家が事故物件になってしまった。もう売れないんじゃないか…」
そんな不安を抱えている方に向けて、難しい法律の言葉はできるだけ使わず、普段の私たちの言葉で、ゆっくりとお話ししていきたいと思います。

そもそも「事故物件」って、どんな家のこと?

まずは、どんなお家が「事故物件」と呼ばれるのか、少し整理してみましょう。
不動産の世界では、建物そのものが壊れていたり、雨漏りがしていたりするわけではないけれど、過去にそこで悲しい出来事があり、「なんとなく気持ちが悪いな」「住むのに抵抗があるな」と感じさせてしまう理由のことを、少し難しい言葉で「心理的瑕疵(しんりてきかし)」と呼んだりします。
では、家の中で人が亡くなったら、すべて事故物件になってしまうのでしょうか? 実は、そうではありません。
昔と違って今は、国(国土交通省)が「こういう場合は次に住む人に伝えなきゃいけないよ」「こういう場合は伝えなくてもいいよ」という、とてもわかりやすい目安となるガイドラインを作ってくれています。
国土交通省ガイドライン
例えば、おじいちゃんやおばあちゃんが、住み慣れた家でご家族に見守られながら寿命を全うされた場合。あるいは、階段からうっかり足を滑らせてしまったり、お風呂で溺れてしまったり、お餅などを喉に詰まらせてしまったというような、日常生活の中での不慮の事故。
これらは、誰の身にも起こりうる「日常の延長」ですよね。ですから、基本的には「事故物件」として次の人にわざわざ伝えなくてもよい、というルールになっています。家という場所は、人が安全に生き、そして最期を迎えるための大切な場所でもあるからです。そこで穏やかに亡くなったからといって、その家が「悪い家」になるわけではありません。
ただし、例外があります。 もし、一人暮らしで亡くなられた後、誰にも気づかれないまま長い時間が経ってしまった場合です。発見が遅れて、お部屋の床や壁に臭いや汚れが染み付いてしまい、大掛かりな清掃やリフォームが必要になった時は、次に住む方にその事実をしっかりとお伝えしなければなりません。
また、自ら命を絶ってしまった場合や、事件に巻き込まれてしまった場合、火事で亡くなってしまった場合。これらについては、どれだけお部屋が綺麗にリフォームされて新品同様になったとしても、家を売る時には次に買う方に「過去にこういうことがありました」と、隠さずにすべてをお伝えするルールになっています。
これが、今の世の中の基準です。 高齢化が進み、一人暮らしの方が増えた今の時代、こうしたお家は決して珍しいものではなくなってきました。あなたのすぐご近所でも、あるいは遠く離れたご実家でも、いつ起こってもおかしくない身近な問題なのです。決して特別な人たちだけに起こる怖い話ではない、ということをまずは知っていただきたいと思います。

家を手放すご家族の、言葉にできない念い」

この仕事をしていて一番胸が締め付けられるのは、そういったお家を手放そうとするご家族(売主様)と向き合う時間です。
遠方に住んでいるお子さんのところに、ある日突然、警察やご近所の方から連絡が入ります。
急いで駆けつけると、そこには変わり果てた親の姿と、つい昨日まで続いていた生活の跡が残された家があります。深い悲しみと、「もっと頻繁に電話をしておけばよかった」「無理にでも一緒に住んでいればよかった」という強烈な後悔が、ご家族を襲います。
お葬式などの手続きが終わり、少しだけ周囲が静かになった後、残されるのが「この家をどうするか」という現実的な問題です。
ご遺族の方とお会いして、温かいお茶を飲みながらゆっくりお話を聞いていると、みなさん本当に疲れ切った表情をされています。
「ご近所の目が気になって、家の片付けに行くのもつらいんです。なんだかヒソヒソ話されている気がして…」 「自分が悪いことをしたわけじゃないのに、なんだか肩身が狭くて、いたたまれないんです」 「こんな状態の家、誰も買ってくれないですよね。ずっと私が高い税金を払い続けて、休みのたびに草むしりをしなきゃいけないんでしょうか」
こうしたご家族にとって、その家はもはや「大切な資産」ではなく、生活に重くのしかかる「心の負担」になってしまっていることが多いのです。
ご遺族が家を売りたいと願うのは、決して「少しでも高く売ってお金儲けをしたい」からではありません。
「早くこのつらい記憶から解放されて、気持ちの整理をつけたい」 「親が残した家が、草ボーボーの空き家になって、ご近所に迷惑をかけるのを見たくない」 「誰か新しい人に住んでもらって、家としての役割を全うさせてあげたい」
そんな、とても切実で、祈るような「念い」が込められています。 私たちは、その重たいバトンを受け取る役割を担っています。だからこそ、表面的な書類の手続きだけで終わらせるのではなく、まずはご家族の心の整理がつくまで、ゆっくりとお話を聞くことを何よりも大切にしています。急いで売ろうとするのではなく、一緒に立ち止まって深呼吸をする時間が必要なのです。

空き家のまま放置するリスクの大きさ

「売れないかもしれないから」あるいは「今はまだ考える気力がないから」と、事故があった家をそのまま空き家にして放置してしまうケースも少なくありません。しかし、これは現実的には非常に大きなリスクを伴います。
人が住まなくなった家は、驚くほどのスピードで傷んでいきます。 窓を閉め切ったままにしていると、家の中に湿気がこもり、壁紙が剥がれ、床の木材が腐り始めます。また、庭の雑草は数ヶ月もすれば人の背丈ほどに伸びてしまい、そこに害虫が発生したり、野良猫が住み着いたりします。
一番怖いのは、不審者の侵入や放火のリスクです。人の目がない空き家は、そうしたトラブルの標的になりやすいのです。もし、手入れをしていない空き家の屋根瓦が台風で飛んでいき、お隣の車を傷つけてしまったら、その賠償責任は所有者であるご家族が負わなければなりません。
「事故物件だから」と放置することで、ご近所の方に実害を与えてしまい、さらに肩身の狭い思いをすることになってしまうのです。だからこそ、つらい気持ちを抱えながらでも、何らかの形で「次にどうするか」を決断し、行動を起こす必要があるのです。

買う側にとって、事故物件は「ダメ」なのか「掘り出し物」なのか?

では、視点をガラリと変えて、家を買う側の人たちについて考えてみましょう。
「過去に悲しいことがあった家なんて、絶対に嫌だ!タダでも住みたくない!」 そう感じる方は、もちろんたくさんいらっしゃいます。それは全く普通のことですし、正しい感覚です。家は毎日安心して眠る場所であり、家族が心身の疲れを癒やす場所です。ですから、少しでも不安を感じたり、直感的に「合わないな」と感じるなら、選ぶべきではありません。
でも、世の中には本当に色々な考え方の方がいます。実際に、そうしたお家でも「買いたい」と言ってくださる方は確実にいらっしゃるのです。
どういう方が買うのでしょうか?
一番多いのは、「過去の出来事は気にしないから、その分安く、自分たちの希望の暮らしを手に入れたい」という合理的な考えを持つ若いご夫婦や、子育て世代の方々です。
過去に出来事があったお家は、周辺の同じような条件の家に比べて、価格がかなり安くなります。
場合によっては、2割引き、3割引き、あるいはもっとお安く手に入ることもあります。
「家を買う予算には限りがある。でも、どうしても子供をマンションではなく、庭付きの戸建てでのびのび育てたい」 「駅から近くて通勤に便利なこのエリアで、普通に家を買うのは高すぎて手が届かない。でも、この価格なら買えるし、浮いたお金で自分たち好みにフルリフォームができる!」
そんな風に、前向きな選択肢として捉える方にとって、事故物件はまさに「掘り出し物」になるのです。

物理的な汚れや匂いはどうなるの?リフォームの現実

価格が安いことのメリットはわかっても、「でも、発見が遅れた場合の匂いや汚れって、本当に消えるの?」と不安に思う方は多いでしょう。
結論から言うと、現在の専門業者による特殊な清掃技術は非常に進歩しており、匂いや汚れは驚くほど綺麗に取り除くことができます。
例えば、床に汚れが染み付いてしまった場合、表面のフローリングだけでなく、その下にある下地の木材まで徹底的に解体して取り除きます。そして、業務用のオゾン脱臭機という強力な機械を何日も稼働させたり、特殊な薬品を使ったりして、目に見えない匂いの原因菌まで根こそぎ消し去ります。
その上で、床を張り替え、壁紙を新しくし、キッチンやトイレ、お風呂といった水回りを最新の設備に交換すれば、家の中は新築と見間違えるほど明るく、清潔に生まれ変わります。「スケルトンリフォーム」といって、建物の骨組みだけを残して中身をすべて新しく作ってしまうことも可能です。
そこまでリフォームされた家を見た時、「過去のことは過去のこと。これから私たちがここで新しい楽しい思い出を作っていくんだから、全く気になりません」と笑顔でおっしゃるお客様に、何度も出会ってきました。
家そのものに罪はありません。 人が住まなくなり、窓を開けて風を通すこともなくなり、庭に草木が生い茂って朽ちていくことの方が、家にとっては悲しいことではないでしょうか。 新しい家族が移り住み、そこから子供の笑い声や、夕飯のいい匂いが漂ってくる。そうやって家が「家としての命」を吹き返していく姿を見るのは、心から嬉しい瞬間です。

「お祓い」や「供養」について

過去の出来事を気にするかどうかは人それぞれですが、購入される方の中には「綺麗にリフォームされていれば全く気にならないけれど、念のためお祓い(おはらい)だけはしておきたい」という方もいらっしゃいます。
こうした場合、地元の神社やお寺にお願いをして、家のお清めやご供養をしてもらうことができます。
神主さんや住職さんに来ていただき、家の隅々までお清めをしていただくことで、「これで本当に新しくスタートできる」と、精神的な区切りをつけることができるのです。
目に見えない部分だからこそ、ご自身やご家族の心が一番落ち着く方法を選ぶことが大切です。
そういった手配なども、ご相談いただければ一緒にお手伝いすることが可能です。

そういう家を買うなら?知っておいてほしい「現実的なチェックポイント」

もし、このブログを読んでいるあなたが、「価格も安いし、リフォームすれば綺麗になるなら、そういう家を買うのもありかもしれないな」と思ったなら。 少しだけ、事前にしっかり確認しておいてほしい「現実的なお話」もしておきますね。
1.家族全員が本当に心から納得しているか?
あなた自身は全く気にしなくても、一緒に住むパートナーや子供たち、あるいはお盆やお正月に遊びに来るご両親が「どうしても嫌だ」と言うかもしれません。家族の中に一人でも強い抵抗感を持つ人がいると、住み始めてから何か小さなトラブル(例えば家族が風邪をひきやすいとか、家電が壊れたとか)があった時に、「やっぱりあの家のせいだ」「だからやめようって言ったのに」と結びつけてしまい、家族の仲がギクシャクしてしまうことがあります。家族全員が話し合い、心から「気にしない」と笑い合えることが、何よりも大切な一番の条件です。
2.ご近所さんとの関係について
家は新品のように綺麗になっても、昔から住んでいるご近所の方の記憶には「あそこは昔、○○があった家だ」という事実が残っています。引っ越してきた当初は、少し好奇の目で見られたり、噂話をされたりすることもあるかもしれません。でも、そこは笑顔で「こんにちは!これからよろしくお願いします!」と明るく挨拶をしていれば、半年もすれば誰もそんなことは気にしなくなります。むしろご近所さんも、実は「ずっと空き家のままで不用心だったから、若い人が越してきてくれて本当にホッとしたわ」と思ってくれることの方が多いんですよ。
3.将来、また売る時のこと(資産価値の現実)
これがいちばん大切なお話です。あなたがその家を買って、楽しく10年、20年と暮らしたとします。
その後、転勤や老後の住み替えなどで、その家を「売る」立場になった時。 あなたが売る時にも、次の買い手に対して「実は私が買う前に、この家でこういうことがあったんです」と伝えなければならないルールになっています。 つまり、あなたが相場より安く買えたのと同じように、将来あなたが売る時も、相場より安くしなければ売れにくい、という事実は変わりません。「将来高く売って儲けよう」という投資のような考え方ではなく、「長く住んで使い倒す」くらいの気持ちで購入することをお勧めします。
4.住宅ローンと銀行の目
少し専門的な話になりますが、銀行でお金を借りる(住宅ローンを組む)時、銀行は「もしこの人がお金を返せなくなったら、この家を売って回収しよう」と考えます。そのため、事故物件の場合はお家の評価額が低く見積もられてしまい、希望する金額を全額借りられないケースがたまにあります。現金で買う方は全く問題ありませんが、ローンを組む予定の方は、早めに私たちのような不動産を扱う窓口に相談して、銀行に確認を取る必要があります。

私たちが大切にしている「包み隠さない」ということ

家を手放したいと願う、深く傷ついたご家族。 これから新しい生活を始めたいと願う、希望に満ちたご家族。
この両者を結びつけるのが、私たちの役割です。
こういうデリケートなお家を扱う時、絶対にやってはいけないのは「隠すこと」です。 「バレなければいいだろう」「聞かれなかったから言わなくていいか」「少しだけ言葉を濁しておこう」というような態度は、後で必ず大きなトラブルになり、関わったすべての人を深く傷つけ、不幸にします。
だからこそ、私たちは、売主様から「言いにくいこと」や「思い出したくないこと」も、すべて正直に話してもらえるような、安心できる関係作りから始めます。そして、買主様には、家の良いところも、過去の悲しい出来事も、すべてテーブルの上に並べて、包み隠さずにお伝えします。
「こういう理由で、このお家は安くなっています。でも、建物の骨組みはしっかりしているし、日当たりは最高ですよ。あとは、あなたの『お気持ち』次第です。急がなくていいので、ゆっくり考えてみてくださいね」
そうやって、嘘偽りのない事実をすべてお伝えした上で、お客様が自分自身で納得して決断できるよう、そっと背中を支えること。それが、一番誠実な仕事のやり方だと信じています。
お一人お一人と時間をかけて、何度でもお茶を飲みながら、不安がなくなるまでお話をさせていただきます。

最後に

「事故物件」という言葉には、どうしても暗くてネガティブなイメージがつきまといます。 でも、少しだけ見方を変えてみてください。
そこには、「誰かの人生の終わり」と「誰かの人生の始まり」が交差する、とても人間らしいドラマがあります。 重たい責任や悲しみを手放して、なんとか前を向こうとする人がいます。 古いものを再生させて、自分たちの手で新しい幸せを作ろうとする人がいます。
もし今、あなたがご実家のことで悩んでいて、「こんな家、どうしようもない…」と一人で頭を抱えているなら。 あるいは、「予算はないけれど、どうしてもマイホームが欲しい」と諦めかけているなら。
どうか、一人で抱え込まずに、気軽に声を聞かせてください。 解決の糸口は、必ずあります。
家は、人が住んでこそ「家」です。 一つでも多くの家が、再び誰かを雨風から守り、温かい団欒の場所として生まれ変わっていくことを、私は心から願っています。
長い文章を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。 これからも、みなさまの暮らしに少しでも役立つお話を、飾らない言葉でお伝えしていければと思います。
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