「昔買った不動産でトラブルが起きたけれど、もう何年も経っているし、文句は言えないよね…」 そんなふうに諦めてしまっていませんか?
実は、不動産取引において「10年経ったから時効」というのは、半分正解で半分間違いです。
今回は、実際にあった相談事例(※プライバシー保護のため一部加工しています)を基に、「10年前の取引」でも仲介業者の責任を問える可能性について、プロの視点で解説します。
もしあなたが同じような状況なら、この記事が解決の糸口になるかもしれません。
【事例】13年越しに発覚した「市道への越境」
今回のトラブルの経緯はこのようなものでした。
購入時期: 13年前(平成25年)
物件: 中古戸建(土地付き)
きっかけ: 老朽化による建て替え・解体工事
発覚した事実: 測量をしたところ、敷地内のブロック塀と建物の一部が、実は「市道(歩道)」にはみ出していた(越境していた)ことが判明 。
市からは「越境部分を撤去し、道路を舗装し直してください」と求められ、その費用はおよそ100万円近く。 購入時、仲介業者からは「境界は西側のブロック、外壁です」と説明を受けており、越境しているなんて一言も聞いていませんでした 。
驚いた買主様が当時の仲介業者に連絡すると、
「もう13年も前のことだ。時効だから責任はない」 ・・・・・・
これ、本当に「時効」で泣き寝入りするしかないのでしょうか?
1. 「10年」ではなく「20年」? 責任追及のポイント
不動産業者が主張する「時効」は、おそらく「債務不履行(契約違反)」の時効(権利を行使できる時から10年※旧民法)を指しています。
しかし、 今回のようなケースでは、もう一つの強力な武器があります。
それが「不法行為責任」です。
調査不足による説明義務違反は「不法行為」
仲介業者はプロとして、重要な事項(境界や越境の有無など)について調査し、買主に説明する義務(重要事項説明義務)があります。
もし、「測量をしていないのに、『このブロックが境界だ』と根拠なく断定して誤った説明をした」のであれば、それはプロとしての注意義務違反、つまり「不法行為」にあたる可能性があります。
法律(旧民法724条)では、不法行為の責任を問える期間(除斥期間)は、「行為の時から20年」とされています。
取引: 2013年
現在: 2026年(経過年数13年)
期限: 2033年まで請求可能!
つまり、まだ期間内なのです。「昔のことだから」という業者の言い分は、法的には通らない可能性が高いのです。
2. 「公簿売買だから測量しない」は免罪符にならない
よく業者は「登記簿の面積で売買する『公簿売買』だったから、測量は不要だった」と主張します 。
しかし、「測量をしないこと」と「嘘(または不確実なこと)を説明していいこと」は全く別の話です。
重要事項説明書に道路の幅員などが記載されている以上、業者は道路台帳などの調査を行っているはずです 。もし現地のブロック塀と図面に明らかなズレがあるのに、それを調査せず「ここが境界です」と言い切ってしまったなら、それは重い過失と言わざるを得ません。
「現況有姿(そのままの状態での引き渡し)」という特約があっても、仲介業者の「調査・説明義務違反」まで免責されるわけではないのです。
3. 裁判しなくてもお金が戻る?「弁済業務保証金」とは
「でも、裁判をするのは費用も時間もかかるし怖い…」 そう思う方も多いでしょう。
そこで知っておきたいのが、「不動産保証協会(宅地建物取引業保証協会)」の存在です。
多くの不動産業者は保証協会に加入しており、万が一、業者のミスで消費者が損害を受けた場合、協会が代わりにその損害を弁済してくれる制度(弁済業務保証金制度)があります。
手続きの流れ(認証申出)
①認証申出: 協会に対し「業者のミスでこれだけの損害を受けた」と申し出ます。
②審査・認証: 協会が内容を審査し、「確かに業者の責任だ」と認められれば(認証されれば)、
業者が支払いを拒否していても、還付(支払い)を受けられる可能性があります。
③還付: 供託所からお金が戻ってきます。
業者が「責任はない」と突っぱねていても、客観的な証拠(当時の重要事項説明書や、現在の測量図など)があれば、協会が動いてくれるケースは多々あります。
まずは裁判の前に、この「認証申出」を検討するのが賢い選択です。
諦める前に専門家へ相談を!
今回の事例のように、不動産トラブルは専門的な知識があれば解決できることがよくあります。
ご自身だけで悩まず、まずは以下の専門家へ相談してみましょう。
◎相手の不動産業者が加盟している「保証協会」の相談窓口
(まずはここ!費用もかからず、認証申出の手続き案内を受けられます)
◎不動産トラブルに強い弁護士 (相手が強硬な場合や、時効の法解釈が必要な場合)
◎土地家屋調査士 (そもそも越境しているのか、境界はどこかをはっきりさせたい場合)
今回のポイントをまとめます。
1. 13年前の契約でも諦めない! 不法行為責任なら時効は「20年」の可能性があります。
2. 業者の「時効だ」を鵜呑みにしない! 説明義務違反があれば責任を問えます。
3. 保証協会を活用しよう! 裁判の前に「認証申出」という手段があります。
不動産トラブルは、時間が経っているほど「もう無理だ」と思い込みがちですが、法律は意外と消費者の権利を守ってくれています。
もし、似たようなトラブルでお悩みの方がいらっしゃいましたら、ご自身だけで悩まず、各都道府県の不動産協会相談窓口や、不動産に詳しい弁護士、または弊社にご相談ください。
「泣き寝入り」は、まだ早いです!
※本記事は一般的な法令解釈および提供された事例に基づく解説です。個別の事案については専門家へご相談ください。
