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新築が増える裏で、町が静かに沈んでいないか。いま、地方の不動産に必要な「視点」

地方の風景を眺めていると、ある「矛盾」に気づかされます。
郊外の農地が切り拓かれ、真新しいアスファルトとピカピカの新築住宅が並ぶ。
そのすぐ目と鼻の先では、かつて誰かの憧れだった団地が静まり返り、古いアパートの窓には「入居者募集」の看板が色褪せたまま掲げられている……。
人口が減り、若い世代が都会へ流出していくこの時代。いつまで「新しい土を盛り、古いものを置き去りにする」仕組みを続けていくべきなのでしょうか。
いま、地方の不動産流通が向き合うべき現実に目を向けてみます。
1. 新築の陰で、既存の資産価値は目減りしている
新しい家が建つことは、一見すると地域の活性化に見えます。しかし、需要が限られている中で供給ばかりを増やせば、しわ寄せは必ず「今ある資産」へと向かいます。
手入れの行き届かなくなった古い団地。
借り手が見つからないままの空き家やアパート。
それらが放置されることで損なわれる地域の景観。
新築住宅が増え続ける一方で、既存の土地や建物の不動産価値は、見た目以上に目減りしています。
この「負の循環」を放置することは、地域全体の未来を削ることにもなりかねません。
2. 「作る」ことより、「活かす」ことに知恵を絞る
新たな宅地造成や新築住宅の建設から一歩ひいてみると、別の道が見えてきます。
それは「今あるストックをどう流通させるか」という、地道で本質的な取り組みです。
確かに、古い物件のリノベーションや、複雑な権利関係の整理には手間がかかります。
効率や短期的な利益を優先するならば、新築を扱う方がはるかに「賢い」選択かもしれません。
しかし、誰かがこの古い資産に光を当て、次の使い手へと繋いでいかなければ、町は虫食い状態になり、最後には維持することさえ困難になります。
3. 「消費」から「循環」へ。地域の価値を守るために
いま求められているのは、土地を切り売りして消費することではなく、今あるものを大切に使い、次世代へ繋ぐ「循環」の仕組みではないでしょうか。
古くても愛着を持って住み継げる家の提案。
団地の再評価による、新しいコミュニティの形成。
安易に新しい土地を拓く前に、まず「隣の空き家」を活かす選択肢。
派手な広告や華やかなモデルハウスはありませんが、こうした地道な流通の改善こそが、10年後、20年後もその土地が「資産」であり続けられる唯一の方法だと考えます。

結びに:正直で、持続可能な不動産のあり方
目指したいのは、新しい土地を広げることではなく、今ある町を「濃く」していくことです。
「売りやすいから」「利益が出るから」という理由だけで、将来の負債を増やすような開発には加担したくない。それは、地域に根ざして不動産を扱う者の責任でもあります。
効率は悪いかもしれません。でも、地元の皆さんが大切にしてきた土地や建物が、これからも価値を持ち続けられるように。
今の地方に必要なのは、新しい家以上に、今あるものを活かす「正しい循環」ではないでしょうか。
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