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「所有者がわからない土地」をどうする? 『所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法』をやさしく解説

■「誰の土地かわからない」場所が増えています
日本では今、「所有者がわからない土地」が増え続けています。
たとえば──
田舎にある実家の土地を、相続のまま放ってある
所有者が亡くなってから登記がされていない
持ち主が遠方に引っ越して連絡がつかない
こうした土地は、登記簿を見ても「昔の名義のまま」だったり、
相続人の数が多すぎて誰が代表なのか分からなくなっているケースが多いのです。
国土交通省の調べによると、日本全国の約2割の土地が“所有者不明”の状態だといわれています。
その面積は、九州本島を超える規模にもなるそうです。

■なぜ問題なの?
所有者が分からないと、誰にも許可をとれません。
そのため、次のような困りごとが起こります。
造成工事や道路工事ができない
防災や治水(川の整備)が進まない
草が伸び放題・不法投棄などで近隣に迷惑
つまり「使えない」「手を出せない」土地が、地域の発展を妨げているのです。

■そこでつくられたのが「特別措置法」
こうした問題を少しでも前に進めるため、
国がつくったのが
『所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法』(略して「所有者不明土地法」)です。
2019年(平成31年)に施行され、その後2022年(令和4年)に改正されました。

■この法律で何ができるの?
一言で言うと、
「持ち主が分からない土地でも、地域のために一定の条件で使えるようになった」
ということです。
① 公共・地域のための利用がしやすくなった
たとえば──
避難場所や公園、防災倉庫をつくる
再生可能エネルギー(太陽光など)の設置
地域のための福祉施設整備
こういった**「地域の役に立つ事業」であれば、
自治体が手続きを行い、
所有者が見つからなくても
「一定期間使える権利」**を設定できるようになりました。
② 所有者を探す仕組みが整った
これまでは、登記簿を見ても分からないと、
「どうしようもない」状態でした。
しかしこの法律では、住民票や固定資産台帳など、
いくつかの公的資料を使って、より効率的に所有者を探すことができるようになっています。
③ 荒れ地への対応ができるようになった
2022年の改正では、
草木が生い茂り、倒壊の危険があるような「管理されていない土地」に対して、
市町村が所有者に**勧告・命令・代わりに工事を行う(代執行)**といった対応が可能になりました。

■どんな土地が対象になるの?
すべての土地が対象ではありません。
主に、以下のような条件があります。
所有者を探しても見つからない、または連絡が取れない
建物が建っていない(空き地)
その地域の暮らしや防災などに役立つ目的で使う
つまり、私有地を勝手に使えるようになるわけではなく、
**「公共性のある利用」**に限定されています。

■この法律で何が変わるの?
これまで「どうにもならなかった土地」が、
**“地域のために活かせる可能性”**が生まれました。
たとえば──
荒れた土地を防災広場に整備
地域の集会所や公園を整備
再生エネルギー発電所の設置
など、放置されていた土地が新しい形でよみがえるケースも出てきています。

■気をつけたいのは「他人ごとではない」ということ
実は、「所有者不明土地」は誰の身にも起こり得ます。
たとえば、
親名義のままになっている土地
相続登記をしていない土地
昔の住所のままで登記が放置されている土地
こうした土地は、将来的に「所有者不明」とみなされる可能性があります。

■いまのうちにできる対策
相続登記をきちんと行う
 → 2024年4月から、相続登記は義務化されました。
  放置すると過料(罰金)の対象になることもあります。
住所変更登記を忘れずに
 → 引っ越ししたら、登記上の住所も変えることが大切です。
土地の管理を定期的に確認する
 → 草木・境界・通行状況など、近隣に迷惑がかからないように。

■まとめ
「所有者不明土地法」は、
放置されていた土地を“地域の力”に変えるための法律です。
ただし、
この制度を使う前に大切なのは、
「自分の土地を放置しないこと」。
登記を整え、所有者を明確にしておけば、
あなたの土地が“知らないうちに使われる”ことも防げます。

■最後に
この法律は、「誰かの責任を追及するため」ではなく、
「地域の未来を守るため」にできたものです。
もし心当たりのある土地がある方は、
一度、司法書士や不動産会社に相談してみてください。
所有者不明になる前に、できることはたくさんあります。
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