はじめに:改正は“未来の予定”ではなく“既に施行された現実”
2025年4月1日、建築基準法および建築物省エネ法の一部改正が施行されました。
つまり、今この瞬間(2025年10月時点)では、その改正後ルールが現行ルールとなっています。
つまり、今この瞬間(2025年10月時点)では、その改正後ルールが現行ルールとなっています。
この改正によって、これまで「都市計画区域外では建築確認が不要」とされてきたケースのうち、一定の建築物については確認申請が義務化されたものがある――。
本記事では、その「どのケースが対象になるか」「なぜそう変わったか」「実務上の注意点」などを丁寧に解説します。
本記事では、その「どのケースが対象になるか」「なぜそう変わったか」「実務上の注意点」などを丁寧に解説します。
第1章:改正の背景と目的──なぜ“都市計画区域外の確認義務化”なのか
改正の主な目的
改正前後の制度説明を読むと、主な改正趣旨には以下が挙げられています:
すべての建築物(住宅・非住宅問わず)に省エネ基準適合を義務付け、安全性・性能を底上げするため。 台東区公式サイト+2国土交通省+2
特に木造建築物では、断熱性向上・設備の省エネ化等によって建物自体の重量化が進んでいるため、構造安全性を確保するための審査をきちんと担保する必要があるから。 環境・省エネルギー計算センター | 環境省エネセンター+2国土交通省+2
建築確認・検査・審査省略制度(いわゆる4号特例)の対象範囲を見直し、木造・非木造を問わず、規模に応じた統一的な基準を整えるため。 国土交通省+4国土交通省+4台東区公式サイト+4
こうした背景を踏まえ、都市計画区域外であっても、ある規模以上の建築物は、一定の安全・性能基準を確認によって担保すべきだという設計思想が改正の根底にあります。
第2章:改正後ルールの全体像 ── 建築確認・検査・審査省略制度の見直し
国土交通省が公式に示す「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」には、以下のような規定が載っています。 国土交通省
以下は、その内容を整理して、特に“都市計画区域外”の観点も含めてまとめたものです。
区域 | 改正前の取扱い | 改正後(現行ルール) |
---|---|---|
都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区等内 | 小規模であれば審査・確認を省略できることがあった | 平屋かつ延べ面積200㎡以下を除き、構造・省エネ関係の審査が必要に 国土交通省+2台東区公式サイト+2 |
都市計画区域等外 | 比較的緩やかで、一定の規模未満の木造住宅などは確認不要と扱われることがあった | 構造にかかわらず「階数2以上または延べ面積200㎡超」の建築物は建築確認の対象になる 国土交通省+2台東区公式サイト+2 |
この表からも読み取れるように、都市計画区域外であっても、改正後は「階数2以上または延べ面積200㎡超」の建築物が建築確認・検査の対象となることが明記されています。 国土交通省
また、改正後は、従来「4号特例」として審査を省略できていた建築物(主に小規模木造)が、**“新2号建築物”**として構造・省エネ関連図書提出義務を負うように区分されています。 eTREE〖デザイナー・設計士のための木材プラットフォーム〗+5台東区公式サイト+5株式会社MAKE HOUSE | 建築BIMによるプレゼン支援と設計図書作成+5
このように、確認制度の“線引き”が改正前よりもきっちり引き直され、対象範囲が拡大したのが今回の改革のコア部分です。
第3章:都市計画区域外で“確認が必要”になったケースを具体的に見る
ここからは、「具体に、どの建物がこれまで不要だったが、改正後確認が必要になったか」を、読者にわかりやすく整理します。
3-1. 新2号建築物とは何か?
改正後の制度では、建築物を主に “新2号建築物” と “新3号建築物” に区分します。 ANDPAD(アンドパッド)+6台東区公式サイト+6株式会社MAKE HOUSE | 建築BIMによるプレゼン支援と設計図書作成+6
新2号建築物:構造・規模により構造審査や省エネ関連図書の提出が必要になる建築物
新3号建築物:比較的小規模・単純な建築物で、従来の特例のような扱いが残されるもの
具体には、以下のようなケースが「都市計画区域外でも確認義務化対象」となります:
木造・非木造を問わず、階数が2以上の建築物
平屋建てでも延べ面積が200㎡を超える建築物
これらは、改正後、都市計画区域外でも建築確認・検査の対象とされます。 国土交通省+2台東区公式サイト+2
つまり、これまで「小さい規模だから確認が要らない」と思われていた木造2階住宅などが、改正後は確認申請が必要になる可能性が高くなったわけです。
3-2. 例:従来“確認不要だった住宅”が対象に
以下のような例が、改正後に“確認申請対象”となる典型例です:
例 | 従来の扱い | 改正後の扱い |
---|---|---|
木造2階建て一般住宅(延べ面積が例えば 120㎡) | 4号特例として、構造関係審査を省略することが認められる場合があった | 新2号建築物として、構造図書や省エネ図書の提出・審査が必要になる可能性あり ANDPAD(アンドパッド)+5株式会社MAKE HOUSE | 建築BIMによるプレゼン支援と設計図書作成+5国土交通省+5 |
平屋で延べ面積 250㎡ の住宅 | 規模が大きいため、従来から慎重な扱いが必要だった可能性 | 新2号建築物扱いとして、確認申請が義務になる |
木造2階住宅をスケルトンリフォームする場合 | 既存の構造を残すなど簡易な改修なら確認不要扱いされるケースもあった | 改正後は「大規模修繕・模様替え」の対象になることが明記され、確認申請が要る場合あり 国土交通省+2台東区公式サイト+2 |
実際、改正後は「大規模修繕・模様替え」も確認手続き対象になる旨、国交省の説明にも明記されています。 国土交通省+1
3-3. 都市計画区域外で確認義務化された意義
このように、都市計画区域外であっても、“構造・性能リスク”が無視できない規模以上の建築物には、確認制度を作用させるという方針が改正で明確になりました。
これにより、従来確認制度が“抜け穴”と見なされていた規模領域をきちんとカバーする意図が制度設計にはあります。
これにより、従来確認制度が“抜け穴”と見なされていた規模領域をきちんとカバーする意図が制度設計にはあります。
第4章:改正後の実務対応で押さえておきたい注意点
改正後ルールを実務レベルで扱う際に、見落としやすい点、リスク、対応策を以下にまとめます。
4-1. “施行日後に着工”が適用要件
改正後の規定(建築確認・検査・省略制度の見直し)は、令和7年4月1日以後に工事に着手する建築物に適用されます。 台東区公式サイト+3国土交通省+3国土交通省+3
つまり、改正前に確認申請がなされたもの、あるいは改正前に設計済みで着工済みの案件には、改正前ルールが適用される場合があります。 国土交通省+2国土交通省+2
ただし、着工が遅延したり計画変更があったりすると、改正後ルールがかかる場合もあるので、その点は注意が必要です。 国土交通省+2国土交通省+2
4-2. 提出図書が従来より増える可能性
新2号建築物扱いになる建築物は、確認申請時に以下のような図書の提出が求められます。 環境・省エネルギー計算センター | 環境省エネセンター+4国土交通省+4台東区公式サイト+4
構造関係の図書(構造計算書、耐力壁配置図、断面詳細など)
省エネ関連の図書(外皮性能・一次エネルギー消費量計算書、設備仕様書等)
従来、4号特例が使われていた建築物では、これらの図書提出を省略できていたケースもありました。
ですが改正後は、これらをきちんと整備できるよう設計体制を強化する必要があります。
4-3. スケジュール・コストへの影響
審査期間の遅延:確認機関での審査量が増えるため、確認済証取得までの時間が長くなる可能性があります。実際、窓口では「提出順に審査を進めるため時間がかかる」との注意を出している自治体もあります。 有限会社 広島県東部建築確認センター
設計コストの上昇:構造計算や省エネ性能検討のための設計工数・専門性が上がるため、設計者や施工者の手間が増える傾向があります。 株式会社MAKE HOUSE | 建築BIMによるプレゼン支援と設計図書作成+3makehouse.co.jp+3耐震構法SE+3
工期調整の必要性:確認申請~適合審査~確認済交付後の着工という工程管理を余裕をもって組むことが望ましいです。
リフォーム工事にも影響:既存建物の改修・模様替え・大規模修繕なども、対象要件を満たすと確認申請が必要になるケースがあります。特にスケルトン改修・構造に関わる部位の補強などは、建築確認対象となる可能性があります。 ANDPAD(アンドパッド)+3国土交通省+3台東区公式サイト+3
4-4. 自治体・確認機関との“事前協議”の重要性
改正後は、自治体や指定確認検査機関による解釈差異が出る可能性もあります。
例えば、図書の細かい記載形式、適合性判断の運用、確認手続きの流れなど、自治体により対応の手順や運用差がありえます。
したがって、設計段階で自治体や確認機関と事前打合せを行い、確認・擦り合わせをしておくことがリスク軽減につながります。国交省資料でも、施行日前後の計画変更・相談を早めにしておくよう留意点を載せています。 国土交通省
例えば、図書の細かい記載形式、適合性判断の運用、確認手続きの流れなど、自治体により対応の手順や運用差がありえます。
したがって、設計段階で自治体や確認機関と事前打合せを行い、確認・擦り合わせをしておくことがリスク軽減につながります。国交省資料でも、施行日前後の計画変更・相談を早めにしておくよう留意点を載せています。 国土交通省
また、申請窓口や担当者の業務範囲変更(都道府県建築主事等)についても注意が必要とされています。 国土交通省+1
4-5. 既存不適格建築物(既存法適合外建物)の取り扱い
改正後も、既存不適格建築物(法改正前に建てられ、現行法には適合しない建物)は、原則現状とおり使用を継続可能な制度設計になっています。 アルバリンク+2サクミル|建設管理業務を効率化する現場管理ソフト+2
ただし、解体・再建築、あるいは大規模改修・増改築する場合には、改正後ルールを適用して設計・確認する必要があります。これまで無確認で改修されていたようなリフォームも、改正後は対象範囲になることがあるため注意が必要です。 アルバリンク+2国土交通省+2
第5章:読者へ伝えたい“これだけは覚えておいてほしいポイント”
最後に、施主・建築主・設計者・工務店向けに、特に重要なポイントをまとめてお伝えします。
都市計画区域外でも「確認不要」ではない建築物が増えた
“2階建て以上” や “延べ面積200㎡超” の建築物は、都市計画区域外であっても建築確認が必要になりました。
“2階建て以上” や “延べ面積200㎡超” の建築物は、都市計画区域外であっても建築確認が必要になりました。
改正後は“図書整備力”が問われる
構造計算書・省エネ性能計算書などの図書をきちんと整える能力と体制が、設計者・施工者にますます求められます。
構造計算書・省エネ性能計算書などの図書をきちんと整える能力と体制が、設計者・施工者にますます求められます。
スケジュールとコストの見直しが必須
確認申請・適合審査の審査期間増、設計工数増などに対応できる余裕を前もって組んでおきましょう。
確認申請・適合審査の審査期間増、設計工数増などに対応できる余裕を前もって組んでおきましょう。
リフォーム・修繕工事も無関係ではない
建物の一部を大幅に改修・模様替え・補強する場合、建築確認申請が必要になるケースがあります。
建物の一部を大幅に改修・模様替え・補強する場合、建築確認申請が必要になるケースがあります。
自治体確認・事前打合せは早めに
計画段階で所轄行政庁・指定確認検査機関と相談し、解釈や提出要件を確認しておくことがトラブル回避につながります。
計画段階で所轄行政庁・指定確認検査機関と相談し、解釈や提出要件を確認しておくことがトラブル回避につながります。
既存建物を活かす際の注意
既存不適格建築物を再建したり改築したりするときには、改正後規定が適用され得ます。既存性能では対応できないケースもあるため、改正内容を踏まえたチェックが不可欠です。
既存不適格建築物を再建したり改築したりするときには、改正後規定が適用され得ます。既存性能では対応できないケースもあるため、改正内容を踏まえたチェックが不可欠です。