■ はじめに:思いがけず「管理責任」と言われて戸惑う人が増えています
「もう何十年も住んでいない実家」
「親の死後、相続放棄をしたのに“管理責任がある”と言われた」
「親の死後、相続放棄をしたのに“管理責任がある”と言われた」
最近、こうした声をよく耳にします。
「放棄したのに、なぜ管理責任があるの?」
「そもそも、誰が、どんな責任を負うの?」
「そもそも、誰が、どんな責任を負うの?」
今回は、相続放棄と“管理責任”の関係を、不動産の実務と法律の両面からわかりやすく解説します。
■ 相続放棄をしても、すぐに責任がゼロになるわけではない?
まず押さえておきたいのが、**「相続放棄をしても、すぐにすべての責任から解放されるわけではない」**という点です。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人が家庭裁判所に申述して「最初から相続人ではなかった」ことにする制度です(民法939条)。
しかし――
相続放棄の手続きが完了しても、「放棄前に管理していた遺産」については、一定期間、管理の責任を負うとされています。
相続放棄の手続きが完了しても、「放棄前に管理していた遺産」については、一定期間、管理の責任を負うとされています。
これは民法940条(旧法)に定められていた規定で、長く解釈上のトラブルを生んできました。
■ そもそも「管理責任」とは何なのか?
「管理責任」と聞くと、「固定資産税を払わなければならないの?」「修理費用を出さなければならないの?」と思う方も多いでしょう。
ここでいう「管理責任」は、遺産が他人に損害を与えないように一時的に保全する義務を指します。
つまり、
建物が倒壊して近隣に迷惑をかけないようにする
不法侵入や火災などを防ぐ最低限の対応をとる
――といった“緊急避難的な管理”が求められている、ということです。
固定資産税の支払い義務や修繕義務などの「所有者としての責任」とは異なります。
■ 2024年4月の民法改正で明確化された「管理義務の範囲」
長年、この「管理責任」は曖昧なままでした。
しかし、**2024年4月1日施行の改正民法(民法940条の2)**で、その範囲が明確になりました。
しかし、**2024年4月1日施行の改正民法(民法940条の2)**で、その範囲が明確になりました。
✅ 改正後のポイント
相続放棄をした人が**被相続人の財産を現に占有していない(実際に管理・使用していない)**場合、管理義務は負わない
一方で、実際に家を使っていた・荷物を置いていた・鍵を持って管理していたなどの場合は、一定期間、管理責任が発生する可能性あり
つまり、
👉「何十年も離れて暮らしていて、実家の鍵も持っていない」
👉「放棄前から全く関わっていなかった」
というようなケースでは、管理責任は発生しないのが原則となりました。
👉「何十年も離れて暮らしていて、実家の鍵も持っていない」
👉「放棄前から全く関わっていなかった」
というようなケースでは、管理責任は発生しないのが原則となりました。
■ 注意すべき「放棄までの間」の管理
ただし注意が必要なのは、「相続放棄の手続きを終えるまで」の期間です。
家庭裁判所で相続放棄が受理されるまでは、法的にはまだ相続人。
したがって、その間に家屋の倒壊などで第三者に損害を与えた場合には、損害賠償責任が生じる可能性もあります。
したがって、その間に家屋の倒壊などで第三者に損害を与えた場合には、損害賠償責任が生じる可能性もあります。
相続放棄を検討している場合は、放棄の申述をするまでの間に、
最低限の安全確認(倒壊・火災・漏電など)をしておくことが望ましいでしょう。
最低限の安全確認(倒壊・火災・漏電など)をしておくことが望ましいでしょう。
■ 相続放棄後に「空き家管理人」などの任命が必要になるケースも
被相続人の財産を誰も管理していない状態が続くと、行政(市町村)や家庭裁判所が「相続財産管理人」を選任することがあります。
この管理人が財産を売却し、清算して債権者などに分配する手続きを行います。
ただし、手続きには費用がかかるため、実務上は自治体や地域の空き家対策担当が動くケースも多いです。
■ 現実的な対処法:困ったときは「専門家」と「自治体」に相談を
放棄したのに「管理責任がある」と言われた場合、
まずは以下の手順で落ち着いて対応しましょう。
まずは以下の手順で落ち着いて対応しましょう。
✅ ステップ1:本当に相続放棄が受理されているか確認
→ 家庭裁判所からの受理通知書を確認。
✅ ステップ2:実際に家を「占有」していたか確認
→ 鍵を持っていた・荷物を残していた・管理していた場合は、一定の管理責任あり。
✅ ステップ3:放棄後も管理を求められる場合は専門家へ相談
→ 弁護士・司法書士・不動産会社などに相談を。
→ 自治体の空き家対策窓口に相談するのも有効です。
→ 自治体の空き家対策窓口に相談するのも有効です。
■ まとめ:放棄しても安心とは限らないが、「知らなかった」で損をしないように
状況 | 管理責任の有無 | 対応策 |
---|---|---|
実家を長年放置・関与なし | 原則なし | 行政や管理人の対応を待つ |
実家を一時的に管理・使用 | あり | 速やかに家庭裁判所に放棄申述、管理責任を整理 |
放棄前にトラブル発生 | 責任を問われる可能性 | 専門家に相談、状況記録を残す |
■ ブログ筆者からひとこと
「親の家、放棄したはずなのにまだ責任があるの?」
そう感じる方は少なくありません。
そう感じる方は少なくありません。
でも、2024年の民法改正で、ようやくその線引きが明確になりました。
ポイントは、“現に占有していたかどうか”。
ポイントは、“現に占有していたかどうか”。
つまり、長年放置していて関与していなかった場合、基本的に管理責任を問われることはありません。
ただし、放棄前後の対応を誤るとトラブルの火種になることも。
迷ったら早めに専門家や自治体に相談する――これが安心の第一歩です。
迷ったら早めに専門家や自治体に相談する――これが安心の第一歩です。