「かつて田んぼだった場所が、今はアパートになっている。」
これは、地方に暮らす人なら一度は見たことのある風景かもしれません。
◆ 米づくりが減り、不動産が増える──なぜ?
日本の水田面積は、昭和40年代をピークに減少の一途をたどっています。主な原因は以下の通りです。
少子高齢化と後継者不足
高齢化により米づくりの担い手が減少。若い世代は都市へ流出し、農地が「空き地」になっているのが現実です。
高齢化により米づくりの担い手が減少。若い世代は都市へ流出し、農地が「空き地」になっているのが現実です。
減反政策(生産調整)の影響
1970年代から続く減反政策により、水田の転用が進みました。結果、住宅地や太陽光パネル、工場用地に変わっていきました。
1970年代から続く減反政策により、水田の転用が進みました。結果、住宅地や太陽光パネル、工場用地に変わっていきました。
農地法と土地利用規制のゆるやかな緩和
農地転用の条件が一部緩和され、不動産業者による買い取り・開発が進んでいます。
農地転用の条件が一部緩和され、不動産業者による買い取り・開発が進んでいます。
◆ 不動産業が農地に目を向け始めた理由
実は、地方で農地を転用した「新しい不動産開発」は静かに広がっています。
ソーラー発電用地としての活用
日当たりのよい休耕田は、太陽光発電施設に適しています。これにより、地権者は農業をやめても収益を得られるという構図が生まれました。
日当たりのよい休耕田は、太陽光発電施設に適しています。これにより、地権者は農業をやめても収益を得られるという構図が生まれました。
分譲地や賃貸住宅への転用
インフラが整っている農村地域では、駅や学校に近い田畑が住宅用地として注目されています。
インフラが整っている農村地域では、駅や学校に近い田畑が住宅用地として注目されています。
リモートワーク時代の「田舎暮らし」ブーム
コロナ禍以降、都市部から地方へ移住する人が増え、農地を含む空き地の不動産価値が再評価されています。
コロナ禍以降、都市部から地方へ移住する人が増え、農地を含む空き地の不動産価値が再評価されています。
◆ 米の未来は?土地の未来は?
米の消費量は年々減っており(1970年:約118kg/人→2023年:約50kg/人)、市場規模は縮小傾向です。
しかし、米づくり=ただの生産活動ではないことを見直す動きも出てきました。
しかし、米づくり=ただの生産活動ではないことを見直す動きも出てきました。
棚田や田園風景の保全
景観資源として観光価値が見直され、地方創生の柱になることもあります。
景観資源として観光価値が見直され、地方創生の柱になることもあります。
「自給」価値の再評価
世界情勢が不安定な今、「食の安全保障」としての水田の存在価値が高まっています。
世界情勢が不安定な今、「食の安全保障」としての水田の存在価値が高まっています。
複合用途としての米農地
米づくりと民泊、農家レストラン、教育体験などを組み合わせた「アグリツーリズム」型の土地活用も注目されています。
米づくりと民泊、農家レストラン、教育体験などを組み合わせた「アグリツーリズム」型の土地活用も注目されています。
◆ 不動産業者にできること
不動産業者は「土地の仲介」だけではなく、地域の未来の設計者としての役割が期待され始めています。
農地転用と地域調和のバランスを取る
地元と協力して、乱開発ではなく、持続可能な土地活用を提案する姿勢が求められます。
地元と協力して、乱開発ではなく、持続可能な土地活用を提案する姿勢が求められます。
空き農地の「再生」プランを創出する
貸し農園、体験農場、再エネ施設、あるいは自給的な住宅地の開発など、米作りの精神を継承する企画がヒントになります。
貸し農園、体験農場、再エネ施設、あるいは自給的な住宅地の開発など、米作りの精神を継承する企画がヒントになります。
米づくりのストーリーを「価値」に変える
古い農家住宅や農村の風景をブランディングして、都市住民の心をつかむ仕掛けづくりも可能です。
古い農家住宅や農村の風景をブランディングして、都市住民の心をつかむ仕掛けづくりも可能です。
◆ まとめ|米と土地、どちらも「命のインフラ」
日本の米づくりと不動産業。まったく違う業種のように見えて、実は土地という共通資源をめぐる営みです。
未来に向けて問われているのは、こうした「空き地」や「耕作放棄地」を、どう社会に生かしていくかというビジョンです。
「米が育つ場所に、何を育てるか」
それを決めるのは、今を生きる私たち一人ひとりです。
それを決めるのは、今を生きる私たち一人ひとりです。